専門家の間でも「ゼロコロナ批判」はご法度だった

しかし、政府はゼロコロナに固執し、専門家も「脱ゼロコロナ」を言ってはならないとの空気感が広がっていました。中国ゼロコロナ対策を主導した「英雄」として知られる、専門家の鍾南山ですら、ゼロコロナ解除の条件について言及すると、おまえはゼロコロナ批判かと叩かれて弁明に追われる始末です。いまの対策を続けることはできないとの発進を続けた専門家は、上海市のコロナ対策ブレーンである張文宏医師などごく少数に限られていました。

上海医療専門家チームのリーダーであり、復旦大学附属華山医院感染症科の部長である張文宏氏(写真=CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)
上海医療専門家チームのリーダーであり、復旦大学附属華山医院感染症科の部長である張文宏氏(写真=CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

――日本でも専門家批判はありましたが、中国はまた別の形で専門家が追い詰められていた、と。さて、中国式ゼロコロナというと、信じられない数のPCR検査を連発して感染者を一人残らずあぶりだすという手法、感染者も濃厚接触者もさらには濃厚接触者の濃厚接触者まですべて隔離施設に放り込むという荒技で知られていますが、他にも特徴はあるのでしょうか?

中医薬(伝統中国医学の薬品)の重視が挙げられます。コロナ対策緩和を受け、中国政府は感染者向けの推奨医薬品リストを発表しています。最新版には108種類の薬品が掲載されていますが、うち67種類は中医薬です。

特に有名なのが蓮花清瘟という薬です。上海ロックダウンでは全世帯に配布されるなど、膨大な数が無料でばらまかれてきました。

私も以前大学から支給されました。我が家にも大量のストックがあります。

中医薬が重視されたが「重症防止の効果なし」

――SARS対策として2004年に作られた薬ですよね。なんかそれ以後、新型インフルエンザなど感染病が起きるたびにひっぱりだされてくるという……。SARSにも新型インフルエンザにも、新型コロナウイルスにも効くっていうのは不思議ですが。

中国国内でも意味があるのか、税金のムダ遣いではとの批判する声があがりました。そこでようやく臨床試験が行われましたが、重症化防止の効果は確認できないことが明らかになっています。熱やせき、倦怠感からの回復が少し早まるという効果はあったそうですが。

とても信用できないので、無料で配られても使うつもりはありません。