「福蔵さん、娘さんがやってくれたよ」
一人のご老人が立ち上がって、「これが見たかったんや。福蔵さんのひょっとこ踊りは見ていて気持ちよくてなぁ。今日は最高や。福蔵さん、娘さんがやってくれたよ」と、涙ながらに言い、斎場内は数分間そのまま余韻に浸りました。
お葬式が終わり、出棺の時間になりました。涙の光る笑顔の美花さまを、共に踊った皆さまが囲んでいます。福蔵さまもきっと、幸せなその輪に混じっているに違いありません。
お葬式でサプライズの演出をするのはとても勇気のいることですし、常識外れでけしからんと言う人もいますので、たとえ思いついてもなかなか踏みきれない人が多いかもしれません。しかし、大切な人を心を込めて送るために行うサプライズは、ご遺族やご参列の皆さまの気持ちの整理に役立つこともあります。
とはいえ、儀式自体をないがしろにして演出に走ったり、奇をてらったりするのは違います。節度を守って臨むようにしていただきたいと思います。
もし、どなたか大切な方のご葬儀の際に、「これだけは見せたい」、「これだけは伝えたい」ということがあるようでしたら、「今言っても準備が大変そうだから」「どうせ無理だろうから」と黙ったまま諦めてしまわず、葬儀担当者や司会者に伝えてみてください。惜しみなく協力の手を差し伸べてくれるはずですし、不可能なことに関しては、なんとか工夫をしてくれるはずです。悔いだけは残さないでいただきたいと思います。