アルコール患者を診る医師の考えを変えることも必要
――内科領域で診ることのできる医療者を増やす必要もあると思いますが、どのような対策が必要だと思われますか。
アルコール低減外来への関心度は、昔より高まっていると思います。それでも、「アルコールの患者は手間がかかる」という印象を持っている医療関係者が多いのも事実です。
時間をかけて治療してもすぐ元に戻ってしまう、救急外来で担ぎ込まれた酔っ払いに自身が絡まれる、他の患者さんとケンカが始まる――。これらの経験を持つと、医師の側も余計に身構えてしまうでしょう。けれど、減酒や断酒をうまく続けている患者を診た経験があればかなり考え方が変わります。
私も所属しているアルコール関連の学会やプライマリ・ケア、消化器、肝臓、公衆衛生に関する学会などからも、より多くの医療者に今まで以上の関心をもってもらう動きが出てきています。間口を広げるため、オンラインでの研修をうまく活用していくことも必要でしょう。
酒は「百薬の長」であり「万病の元」
――「酒は百薬の長」なのでしょうか。
酒は百薬の長、されど万病の元ですね。一時期は少量の酒なら健康によい、死亡率が少なくなるなどの研究結果がありましたが、近年は少量飲酒でどれくらい害があるかという研究が進み、少なければ少ないほどいいというのが最近の風潮です。
公衆衛生というマクロで見ると絶対減らした方がいいとなります。けれど、ミクロで見ると、健康な人が飲んでいることに対して私は何とも思いません。「体を壊さない範囲で飲んでね」と思うくらいですね。
つまり、マクロとミクロは別と分けて考えています。一人ひとりがどういう選択をするかはその人の生き方で、法的に禁止されているものではない。自分の選択が大きいのです。
(構成=西内義雄)