億単位の貯金があっても不安
中沢響子氏(仮名、40歳)は金融機関の課長クラス。リスク管理業務に従事し、年収は800万円台だ。
「仕事にはさほどやり甲斐を感じませんが、今の会社で活路を見出すしかないですね。他の人にできない業務に就いているから、頑張って何とか会社にぶら下がっていきたい」
若いうちは「仕事さえちゃんとやっていればいい」と周囲に角が立つくらい懸命だったが、今は根回しを最も意識する。部長は今もたくさんいるから、昇進は至難の業だ。酒に弱く、内輪で飲むことはほとんどないから、コミュニケーションの絶対量は同僚に比べてずっと少ない。
「出る杭といっても、出すぎるほど出るには力量が必要。税理士の資格も持ってるし、TOEICで930点を取った。米国公認会計士も一科目だけ合格したけど、資格ばかり取っても実務には関係ないですね」
3年前、20歳年上の男性にプロポーズされたが、「考えすぎちゃって」断った。一昨年に株取引で400万円損したおかげで、預貯金は約2000万円に減った。
「貯金が億単位あっても不安ですね。一人っ子だから、無事に定年まで勤めたら田舎の父の家で一緒に暮らすというのもいいな。あの世には私が先に行くつもりなので(笑)」
一見、後ろ向きのコメントばかりだが、どの方も仕事への意欲は低くはない。高度成長期やバブルの残像を逃れた“大人”な方々……と見るのは贔屓目にすぎるだろうか。
※すべて雑誌掲載当時
(宇佐見利明=撮影)