しっぺ返しには、目に見えるものと見えないものとがある。
「上司(のパーソナリティ)を見極めて、意見を言ったり同調してもらいます。嫌らしい言い方をすれば、人を選んでそちらになびく、人を選んで文句を言うことですね」
化学メーカーの商品部門に勤める内田茂樹氏(仮名、41歳)が言うように、部下は気付かぬところで上司を選び、見捨てる。
「この人には何を言ってもムダ、という上司の場合は、一つ飛ばして上の人に言います。もちろん、後で上司へちゃんとフォローしてくれるような人じゃなければダメですが」
20代の頃の内田氏は仕事一筋だった。職場の人間関係に恵まれ、“ウラ”を考えずに済む環境だった。自身も仕事をガツガツこなし、社内でのしあがることを考えていた。会社にとってかけがえのない存在になりたい、という一念があった。
しかし30代半ばで異動先の上司から手ひどいパワハラを受け、うつ病に。約1年の休職を強いられた。
「働き甲斐より生き甲斐。家族との繋がりを大切にすることにした。そのため、年功序列でそれなりに稼げるこの会社に居座ることにしました。一生懸命仕事はしますが、ムチャは禁物。目立ちすぎず、埋没しすぎず、当たり障りないように過ごします」
今後は資格を取るよりも、“この商品のことなら社内でトップ”“これはこいつにしかできない”などと言われるスキルを磨いていくという。