原告側「子どもを守る法制度整備を」

TさんやK君を含む親子ら男女17人が原告となった今回の訴訟で、原告側は「離れて暮らす親子が自由に会えなくなったのは、国が法整備を怠ったためで、幸福を追求する権利や法の下の平等を保障した憲法に違反する」と主張。国に1人あたり10万円の賠償を求めた。しかし、東京地裁は11月28日の判決で、「面会交流の実現には相手方の対応が必要で、別居する親や子の憲法上の権利と解釈するには疑問がある」とし、国に立法の義務があるとはいえないと判断、訴えを退けた。

原告代理人の作花知志弁護士は「弱腰で残念。司法が法改正をリードするような判決を出してほしかった」と話し、12月に東京高裁に控訴。「面会交流が拒否されることで、一番影響を受けるのは子どもたち。国は面会交流に関する権利義務や手続きの規定を定め、子どもを不利益から守るための法制度を整備すべきだ」と強調する。

離婚後の親子関係については、国でも議論が進んでいる。

家族に関わる法制の見直しを検討してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は、11月15日に民法改正の中間試案を取りまとめ、12月6日からはパブリックコメント(意見公募)が始まった。

中間試案には「共同親権」を選べる案や、現行の「単独親権のみ」を維持する案が併記されたほか、協議離婚をする際には面会交流の取り決めを要件とする案などが示された。

「共同親権」に関しては、「離婚後も父母双方が子の養育に責任を持つべきだ」との考えなどから支持する声がある一方、「関係が継続することでDVや虐待が続く恐れがある」などと反対する声も強い。海外では共同監護を導入する国が主流となっており、24カ国を対象にした法務省調査では、単独親権のみの制度を採用しているのはインドとトルコだけだった。

子ども目線の議論を

離婚を巡り親同士が対立する一方で、子どもたちに取材すると「これ以上争わないでほしい」「別れても、父も母も親であることは変わらない」との声が非常に多い。

厚生労働省の調査(2016年)によると、面会交流の実施状況は母子世帯で約30%、父子世帯で約46%と低調だ。その背景には支援制度の欠如とともに、「離婚したら親はひとり」との社会通念を醸成してきた単独親権制度も大きな要因としてあるだろう。

児童の権利に関する条約が1989年に国連で採択されると、世界では「離婚後も父母双方と関わりを持ち続けること」を子どもの権利として尊重する風潮が広まり、共同監護を採用し、支援を拡充する国が増えていった。離婚による子どもへのマイナスの影響を予防するためには、面会交流と養育費が2大要因となることも、欧米の多くの調査で指摘されている。

日本でも、父母の葛藤を下げるためのカウンセリングや離婚後の子育てについて学ぶ親講座、養育計画の作成義務化などの支援整備が急がれる。「別れても双方の親が子どもの成長に責任を持つ」との社会意識や法的基盤の構築のためにも、共同親権を導入し、DVや虐待など問題がある場合には面会交流の制限や親権停止、単独親権を適用するといった制度が必要なのではないだろうか。

親の離婚を経験する未成年の子どもは、毎年約20万人。どのような法制度、支援を作っていけば子どもたち一人ひとりの成長を支えていけるのか。子ども目線からの冷静な議論を深めてほしいと思う。

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