「レモンをつかんでしまったら、レモネードをつくれ」
欧米のビジネス書などでしばしば目にする英語の格言に、「レモンをつかんでしまったら、レモネードをつくれ(Make a lemonade if you got a lemon)」がある。英語圏では酸っぱいレモンは失敗を意味する。事業上の大きな失敗(レモン)に遭遇することがあっても、それを契機においしいレモネードをつくり、事業をさらに発展させればよい。このようなポジティブな思考を、この格言は説く。
とはいえ、失敗に直面したときに、そんなにうまくものごとを運ぶことができるものだろうか。つかんだレモンをレモネードに転じるには、どのような備えが必要なのか。会社存亡の危機を新たな事業の機会に転じたアクサスの事例を基に検討してみよう。
アクサスはITエンジニアの派遣サービスを主軸に各種の事業を展開してきた。現在のアクサスの売り上げは60億円を超え、社員数は800人を上回るまでに成長している。
アクサスは2007年に、人材関連の各種事業を展開するネオキャリア・グループの一翼を担うべく設立された。10年ほどを経て大きく成長を果たしたアクサスは、2018年10月にネオキャリア・グループの最優秀事業部賞(MVP)を受賞する。
しかし、翌11月に事態は一転してしまう。アクサスに厚生労働省大阪労働局から、行政処分の通知が届いたのである。
「偽装請負」とみなされて
当時のアクサスでは、売り上げの約6割をシステム・エンジニアリング・サービス(SES)が占めていた。SESは、元請けとなる企業が派遣先企業を開拓し、準委任契約を結んだ個人、あるいは下請けの小規模事業者に所属するエンジニアを紹介するという方法で行われる。
人材を派遣する規模や期間などについての自由度が高いSESは、スピードが求められるシステム開発への対応に適している。したがって、システム開発の現場では広く用いられている方法である。
だがSES契約の下では、派遣先の企業からエンジニアが直接指示を受けて業務を遂行した場合、労働者派遣法の規定によって「偽装請負」とみなされてしまう。アクサスへの行政処分も、この問題によるものだった。