葬儀費用を安く抑えるにはどうすればいいのか。元経理マンの中町敏矢さんは「病院で死亡すると、一切の行事を省いて、火葬場に直行する『直葬』という方法がある。それよりも安いのは『献体』で、手間も費用もまったくかからない」という――。(第1回)
※本稿は、中町敏矢『月14万円の年金で夫婦が生活している術』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。
人体解剖学実習の教材として自分の遺体を提供
2011年1月、俳優の細川俊之(享年70)が突然亡くなった。
彼は生前、「自身の始末」を考え、出した結論は「献体」だった。2枚目スターと献体という思いがけない取り合わせに、私は驚かされた。
献体とは、大学の医学部や歯学部で行われる人体解剖学実習の教材として自分の遺体を無条件、無報酬で提供することをいう。
近年では作業療法士などを養成する保健学科でも、解剖実習を行うようになった。
「献体」は法律で規定されているが、手続きなどはよく知られていない。
献体した有名人には夏目漱石がいる。夫人の希望で、遺体は東京大学に渡され、医学の発展に貢献した。
移送費・火葬料など一切の費用は大学側が負担
献体すると、通夜や葬儀は行わないか、行ったとしてもあわただしいものになる。
なぜなら、大学は死後24時間から48時間以内の遺体の引き取りを希望しており、時間の余裕がないからだ。だから、献体は地元の大学に限られる傾向がある。
遺体の移送費・火葬料など一切の費用は、大学側が負担するので、献体すれば「オールゼロ円」が実現する。
“お役目”を終えた遺体は、大学側が火葬をし、遺骨は家族に届けられるが、それが1年後か、もっと先になるかはわからない。
引き取り手がいない遺骨は、大学が用意した合祀墓や納骨堂に納められる。
手続きには、事前の登録が必要で、申し込みは直接、大学病院にするのではなく、献体篤志家団体、または医科および歯科の大学になる。
なお、献体登録をした者に対し、大学病院などが優先的に入院させるといった特別扱いは存在しない。