発売前からの緻密なSNS戦略が成功のカギに

高い商品力、ニーズに応えるカラー展開、SNSでのバズを想定したネーミング。さらに加えて、商品を気になった人がSNSで調べたとき、あらかじめ人気商品として評判が確立されているように、発売前から緻密なSNS戦略が設計された。店頭で手に取って試しにくい環境だからこそ、SNS上で体験できる場づくりに注力した。

発売の10日ほど前からYouTubeでの情報発信、クチコミサイトなどでのサンプリング、美容メディア向けの発表会、美容系インフルエンサーを活用した拡散を仕掛け、SNS上での認知度と体験機会を広げた。発売日の2021年5月1日からはTikTokでのプロモーションを展開し、インフルエンサーが黒いマスクを外すと、唇のリップモンスターの色が曲に合わせて変化するショート動画を拡散させた。これは、あえてシンプルな動画にすることで、一般ユーザーが真似した動画を投稿しやすいように仕掛けた。

これらの仕掛けが功を奏し、リップモンスターはSNSで大きくバズり、発売直後から爆発的な人気となった。メインターゲットの若年層だけでなく、親世代にまで広がり、幅広い顧客を獲得することに成功した。一時、生産が追い付かないほどの大ヒット商品となり、わずか半年で120万本、その後2022年9月までに累計出荷本数500万本を突破した。2021年のベストコスメ賞を総なめし、KATEとして口紅で初のシェア1位を達成するなど、コロナ禍に苦しんだ化粧品業界において異例の成功を収めた。

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