「メイクを楽しみたい!」という思いを刺激する商品ネーミング

1997年に生まれたKATEは、既成概念に囚われずに自分らしさを表現する「NO MORE RULES.」がコンセプトのブランドで、ずっとアイメイクに強いブランドだった。アイシャドーやアイブローでヒット商品として不動の地位を築いていたが、口紅は弱い分野となっていた。口紅の強化を進めていた矢先にコロナ禍となり、コロナ禍のニーズに応えられる新商品の開発へ方向転換することになった。

外出自粛の長期化、リモートワークの常態化が進み、化粧品全体の売上は大打撃を受けた。その需要が下がったタイミングでの新商品開発を疑問視する声は社内で少なくなかったというが、そういうときにこそ挑戦するブランドとして開発が推し進められた。SNSを中心にユーザーの声を集めるなかで、トレンドに敏感な若年層の「こんなときでもメイクを楽しみたい!」というニーズを拾いあげ、それに応える口紅として開発がスタートした。

商品開発でこだわったのは「つけたての色」と「保湿力」の両立だ。マスクをしていると口紅を塗りなおしにくく、口呼吸になりがちで唇は乾燥しやすくなる。もともと開発していた「落ちにくい」技術に、唇から自然蒸発する水分を活用して密着ジェル膜へ変化させる新技術を組み合わせることで、色持ちと保湿を実現させた。機能的なニーズだけでなく、感情的なニーズにも応えるために、「メイクを楽しみたい!」という思いを刺激するワクワク感のある「リップモンスター」という商品名が採用された。何か凄そうな新しい期待感、そしてKATE史上最強の落ちにくさから付けられたネーミングである。

ソーシャル メディアのアイコン
写真=iStock.com/alexsl
※写真はイメージです

SNSリサーチから若年層のニーズをキャッチ

SNSのリサーチから、最近の若年層は同系色の口紅を複数買い、気分やコーディネートに合わせて違いを楽しむ傾向が確認された。そこで、赤やピンクなどの広いカラー展開はせずに、トレンドのブラウン系にあえて特化して、微妙なニュアンスの違いを楽しめる11色展開で、ユーザーの収集欲をかきたてる効果を狙った。普通ならば数字や英文字でシンプルに表記される各色について、「ラスボス」「3:00の微酔」「憧れの日光浴」など、その色を使ったときの気分や連想するイメージで特徴的なネーミングを付けた。これは、ユーザーの好奇心や創造力をかきたて、キャッチーで、SNSでつぶやく面白さを提供することに有効に働いた。