ポテトチップスとしては高くおつまみとしては安い「個性の尖った商品」

味の開発では、辛くて旨い、クセになる味が追求された。創業者の小池氏じきじきに「いや、もっと辛くした方がいい」と激辛にこだわり抜いたという。ポテトは、通常の形よりも濃い味付けにしやすい細長い棒状の形を採用した。カルビーは若い女性や子供を中心としたファミリー向けであるのに対して、湖池屋のカラムーチョは大人向けの商品として開発された。100円という安い価格に対しては、200円の高価格を設定。パッケージはド派手なデザインで、個性の尖った商品とした。売り場は、お菓子売り場よりおつまみ売り場を優先し、ポテトチップスとしては高いが、おつまみとしては安い商品に位置付けた。

ところが、メインの取引先であるスーパーマーケットから取り扱いを拒否されてしまう。辛い物は、食べたお客からクレームが来やすく、「なんでこんな商品を作ったんだ」と非常識扱いされることもあったという。「激辛=タブー」という常識の壁が立ちはだかった。そこで、当時ちょうど店舗数を増加していたコンビニをターゲットに変更すると、当時のコンビニは酒屋から転身する店が多く、おつまみとして理解して取り扱いをしてくれた。すると、コンビニで大学生を中心に「スゴイ!」「面白い!」とクチコミが広がり、瞬く間に爆発的ヒットとなった。

カラムーチョは、その後のポテトチップスの味の多様化や、今なお続く「激辛」人気の最初の一歩を開拓した「イノベーション」と言えるヒット商品である。食品業界の「型」、そして消費者の「型」を破ることによって、新たな価値を創りだすことに成功した。

コロナ禍で異例のヒット 花王「KATE リップモンスター」

花王傘下、カネボウ化粧品の「KATE リップモンスター」は、自社で当たり前化していた商品開発や広め方などのマーケティングの「型」を破ることで、コロナ禍に異例のヒットを実現した。花王は、高い技術力に裏打ちされた機能性を強みとして、マーケティングでは分かりやすい商品開発、マスメディアでの広告発信など、前例や王道的な手法を選びやすい傾向にあった。しかしリップモンスターでは、その花王があえて踏み切ったSNS型の商品とプロモーションが成功を導いた。

キスプリントレッド
写真=iStock.com/marabird
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