オリジナル作品の製作が成功のきっかけに

ネットフリックスのさらなる飛躍のきっかけとなったのが、2013年から始めたオリジナル作品の製作だ。なかでも、ハリウッドのトップクラスの監督や俳優を迎えて巨額の製作費をかけ、アメリカの政界における権力争いの人間ドラマを描いた「ハウス・オブ・カード」は大成功を収めた。これを機にネットフリックスは、作品を買い付けて配信するだけの立場から、意欲的な作品を自ら作るスタジオへ変身を遂げていった。

ちょうどこの頃、ハリウッドの映画業界は、ファミリー向け・シリーズもの・アクション大作などの大ヒットが見込める作品か、若手の監督や役者を抜擢して低予算でヒットを狙うコストパフォーマンスの高い作品に、映画作りが偏るようになっていた。その結果、行き場をなくした映画人のよりどころとなったのがネットフリックスで、潤沢な製作費をかけた大人向けの作品づくりを一手に引き受けた。

ハリウッドサイン
写真=iStock.com/Rudy Salgado
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巨匠マーティン・スコセッシが名優アル・パチーノとロバート・デ・ニーロを迎えたギャング映画「アイリッシュマン」は、その良い例だ。この作品は、ハリウッドの映画スタジオから断られた末に、ネットフリックスが製作費と内容に完全な自由を約束することで実現した。スコセッシ監督が「これほど自由に映画を作れたことはない、最高の経験」と口にするほど徹底した作品作りが行われ、「スコセッシ監督の集大成」と絶賛される名作となった。

ネットフリックス最大の強みとは

ネットフリックスの強みは、「映画」という枠や、「スタジオ」という役割に縛られることなく、あらゆる作品作りと、そこから派生するコンテンツ作りを、エンターテインメントの名のもとに何でもできるところにある。「アイリッシュマン」の配信時には、製作陣が舞台裏を語り合うドキュメンタリーもセットで公開された。

硬派な作品だけでなく、気軽に楽しめるポップコーンムービーも作れる。「タイラーレイク(原題:EXTRACTION)」や「グレイマン」のような巨額の製作費をかけたアクション大作を作り、その続編・スピンオフ作品も派生させていく。才能の発掘にも力を注ぎ、他のスタジオから企画を断られ続けた無名のクリエイターだったダファー兄弟に機会を与え、「ストレンジャー・シングス」の大ヒットを生み出した。非英語作品として初めてエミー賞を獲得した「イカゲーム(原題:Squid Game)」を世界中でヒットさせ、その続編はもちろん、456人の参加者が456万ドル(約6億円)の賞金をめぐって競い合う史上最大規模のリアリティ番組「Squid Game: The Challenge」も製作が予定されている。こうした、制約なく何でもできる「型破りなコンテンツ作り」はネットフリックス最大の強みとなっている。