自民党の山田太郎参院議員は「政府はフリーランスや副業を進めてきた。それなのに現下の経済状況で消費税負担が上がるような制度はおかしい」と指摘した上で、「現在の区分記載制度で十分なのではないか」とインボイス導入の意義について疑問を呈する。

「まずはインボイス制度が本当に必要なのかという点を議論すべきです。そこで本当に必要だというならばインボイスは全事業者に導入するようにして、免税制度は残すようにする。そうした議論を重ねていくべきです。いまはインボイスと免税制度がリンクしているので、激変緩和措置をとることが検討されるなどいろんな形で制度に歪みが出てきてしまっている」

「誰も得しない制度です」

現在、その「歪み」を埋め合わせようと小手先の対応がなされようとしている。「年間売り上げが1億円以下の事業者に対しては1万円未満の仕入れに対してはインボイスを不要とする」などの激変緩和措置の導入が検討されているという。これはタクシー料金などの少額領収書への対応をすることが目的だと思われるが、その場しのぎの対応では混乱に拍車をかけることになりかねない。

山田議員はこうした状況も鑑みて「2年間の延期」をして、再度議論をしていくべきだと主張する。ただ、実際のところ「2年間延期する」こともテクニカルな面では非常にハードルが高いという。

「法律を通すという話ならば反対で止めやすいが、このインボイスは2016年の所得税法等の改正で決まってしまっている。一度通った法律を止めるにはそのための立法をしないといけない。ただし、この問題はもっと合理的に考えるべきです。いま押し通さないといけない理由はないし、誰も得しない制度です」

書斎スペースで頭を抱える男性
写真=iStock.com/wagnerokasaki
※写真はイメージです

岸田首相の「聞く力」が試されている

各業界からフリーランスで仕事をする人たちが反対の声を上げている。そして、与野党からも噴出する「インボイス制度」への疑問。明らかに増大する社会的コストと見えないメリット。それらを考えると、少なくとも数年間の延期は最低限必要なのではないだろうか。

しかし、現実問題としてインボイス導入の中止や延期を実行できるのは岸田首相しかいない。なぜなら、決まっていた消費増税を安倍首相が延期したように、首相の決断なくして法律で決まったことを凍結することはできないからだ。

岸田首相が自らの最大の武器だと語ってきた「聞く力」。岸田首相が耳を傾ける相手は財務省なのか、それとも国民なのか。

その点を厳しく注視していく必要がある。

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