再婚
いよいよ西山さんの息子が小学校を卒業する間際になり、西山さんはヤキモキしていた。食事に誘ったり、旅行に誘ったりして男性の機嫌を取る。そんなときに、男性とその頃、同居していた長女(当時26歳)が独立したことがきっかけで、やっと「じゃあ結婚して一緒に暮らそうか」という話になった。
再婚が決まると、西山さんは男性の母親と会うことに。
男性は73歳の母親と2人で実家暮らし。実家は築100年以上経っており、見るからにボロボロだった。男性の父親は約5年前に亡くなっていたが、「家庭をかえり見ず、土建屋の仕事で稼いだお金を全部ギャンブルでスってしまうような人だった」と聞いた。
「父親がお金を家に入れないので、母親は、昼は食事を作る仕事をし、夜は水商売の仕事もして家計を支えていたそうです。大変な苦労をされたとは思いますが、雰囲気や言動が下品で、私は好きになれませんでした。仕事のある息子と一緒に住んでいるのに、住民票は別にして、生活保護を不正受給していることも嫌でした」
その後、西山さんの両親や小学校6年生の息子に会わせるために、男性を実家に連れて行った。西山さんの息子は、「お父さんとお母さんがそろっている家庭に憧れていた」と言い、うれしそうだった。西山さんの76歳の父親は、涙を流して喜んでいた。
しかし男性が帰ったあとのこと。
「玄関を入った途端、キョロキョロと家の中を見回していたのが気になった。何か気味が悪かった」
と、70歳の母親が西山さんにこぼした。そのとき西山さんは気に留めず、笑って聞き流してしまった。だが、このほんの数カ月後には、母親の勘は当たっていたのだと驚かされたのだった。