死者への誹謗中傷は遺族に対する名誉毀損として評価される

自分の死後、あることないことを言われたり、プライベートな情報を公開されたりしても、反論のしようがありません。死後の名誉やプライバシーは保護されるのでしょうか。

死者の名誉は、一応、法的に保護されています。まず、刑事上、死者に対する名誉毀損は、虚偽の事実を摘示して社会的評価を低下させた場合に限り成立します。

民事上の場合は、少し事情が異なります。刑事上の場合と同じく、虚偽の事実を摘示して社会的評価を低下させることが死者に対する名誉毀損にあたると考えることはできますが、死者が、自らの名誉権が侵害されたとして権利を行使することはできません。そこで、死者自身の社会的評価を低下させるにとどまらず、遺族の社会的評価をも低下させる場合には、遺族に対する名誉毀損として評価できると考えられています。

また、「遺族の故人に対する敬愛追慕の情(敬い慕う気持ち)」という人格的な利益も法的保護を受けるものと考えられており、死者の名誉を害する行為が、この敬愛追慕の情を侵害する場合には、遺族に対する不法行為にあたります。

なお、上記は死後に初めて名誉毀損がされた場合の話です。生前に名誉毀損を受けて損害賠償請求を行っており、その最中に亡くなったときは、死者の名誉権(人格権)そのものが相続されるわけではありませんが、生前に行使していた損害賠償請求権が財産権として相続の対象になります。

死者にプライバシーはない

他方で、プライバシーについては、死後も保護されるという考え方は取られておらず、死者にプライバシーはありません。著名な作家が生前に書いたラブレターなどが、死後に発見されて公開されるということもありますが、これはプライバシーの侵害にはあたりません。

小林航太『オタク六法』(KADOKAWA)
小林航太『オタク六法』(KADOKAWA)

もっとも、公開されたラブレターなどが著作物にあたる場合には、著作者人格権との関係が問題になります。著作者人格権じたいは相続されることはなく、著作者が死ぬことで消滅してしまいます。しかし著作者が生きているならば、その著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない旨が著作権法上規定されています。

生前であれば、未公表の著作物を著作者に無断で公表することは公表権の侵害にあたりますから、死後も同様に許されません。この場合、著作者の遺族は、著作者人格権の侵害者に対し、差止めの請求および名誉回復等の措置の請求(こちらは故意または過失が必要)をすることができます。

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