※本稿は、西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
ロケット開発もパクりでよくね?
最近もツイッター社の買収騒動などで世の中を騒がせているイーロン・マスク。
電気自動車をつくっているテスラ・モーターズのCEO(最高経営責任者)で、スペースXというロケット開発会社を創業して民間で初めて国際宇宙ステーション(ISS)へ有人飛行を実現させたことでもよく知られています。
天才起業家や稀代の変人などと言われたりしていますが、僕が彼を優秀だなと思うのは、問題解決力が高いからです。
彼がロケット事業を始めるまでは、宇宙開発は民間企業には手を出せない、国の威信をかけた国家事業でした。人工衛星を1機打ち上げるには約2億ドルかかるなど、ロケットの開発や打ち上げに膨大なコストがかかっていました。
ただ、1961年にソ連が世界初の有人宇宙飛行を成し遂げてからすでに60年経っていて、ロケットを宇宙に飛ばすための原理原則はもうわかっているんですよね。だから、イーロン・マスクは宇宙ビジネスに参入するときに、「どんなロケットをつくるか」ではなく、「ロケットをいかに安く、早くつくるか」に注力したんです。「いかに効率的にロケットを生産する体制をつくるか」を考えた。
そこで彼が出した答えが、「別にロケットを1から自分たちでつくらなくてもよくね?」でした。
スペースXは、ロケットエンジン企業の開発チームをはじめ、アメリカの優秀な技術者を次々に引き抜いて、わずか2年でコピーのエンジンをつくりました。
「成功例をパクる」という問題解決のテクニックを、イーロン・マスクも使っているわけです。
さらに、それまでのロケットエンジンは約100万点ともいわれる部品を職人が手作業などで組み立てて製造していたのですが、スペースXは3DプリンターなどのIT技術を駆使してコストをかなり削減しました。
短期間かつ低コストの仕組みを発明
2020年には、スペースXの再使用ロケットが話題になりました。
それまでロケットの機体は1回打ち上げるたびに使い捨てられていたのですが、スペースXはロケットの一部や丸ごとを繰り返し使用できるようにしたんです。それによって、宇宙への輸送コストは100分の1に下がるとイーロン・マスクは言っています。
見事に短期間かつ低コストでロケットを生産する仕組みを、彼は発明したんです。
イーロン・マスクは長期的な視点でゴールを設定したからこそ、大きな成功を手にできたわけです。
ほかにも、がんばってロケットを開発しているベンチャーはありますが、打ち上げの成功までで終わってしまっていて、短期的なゴールしか見えていないんですよね。
それだと、国際宇宙ステーションへ何度も荷物を輸送しようとしたら、毎回新しいロケットを製造しないといけません。おそらくイーロン・マスクは、短期間、低コストでロケットを製造できる仕組みをつくったほうがビジネスになると見越していたのだと思います。
やはり問題解決力の高い人は、長期的な視点でゴールを設定していることがわかります。