二刀流は合理的な考えから生まれた
イーロン・マスクは現役で活躍しているビジネスマンですが、歴史上の人物にも問題解決力の高い人はたくさんいます。
なかでも、僕が超優秀だなと思うのは、宮本武蔵です。
言わずと知れた、戦国時代から江戸初期に活躍した、日本史上最強ともいわれる剣豪ですね。佐々木小次郎との巌流島の決戦でわざと遅刻したという有名な話は創作なのですが、実際の宮本武蔵はとにかく強かったんです。
なにせ、生涯に60回以上、真剣勝負をしていながら、一度も負けたことがありません。あの時代に無敗のまま長生きして、最期は老衰で死んだ、というだけでも優秀ですよね。
武蔵といえば両手に刀を持つ二刀流でも知られていますが、じつは、あれも合理的な考えから編み出された戦法なのです。
戦のときには、馬に乗って右手で手綱を握って左手で刀を振らないといけないような状況もあります。そうした利き手が使えないときに、「右利きだから左手じゃ斬れません」なんて言っていたら殺されますよね。
だから武蔵は、「利き手じゃない左手でも刀を使えるようになったほうが強いよね」と考えた。二刀流は、生き残るために編み出された、至極当たり前の結論だったんです。
敵に囲まれたらダッシュで逃げろ
亡くなる前に剣術の奥義をまとめた『五輪書』には、それ以外にも武蔵流の独自の戦略がいろいろと書かれています。
たとえば、戦で多数の敵に囲まれたらどうするか?
1対10とかになった時点で、ふつうなら無理ゲーって思いますよね。
でも、天下無双の武蔵は違います。
多数の敵を前にしたときにどうするかというと、まずダッシュで逃げるんです。
当然、敵は追ってきます。でも、10人いたら足の速さはまちまちなので、1人目に追いつかれたらその敵と闘うんです。すると、その瞬間は1対1になります。そして次に来た2人目、その次に来た3人目と闘っていく。集団戦になってきたら、また逃げて1対1をつくり出す、という戦法です。
要するに武蔵は、1対多数の状況でも、時間軸で見たら1対1の連続でしかない、と説いているわけです。
たとえ右と左から斬りかかられたとしても、完全に同時ということはないので、先に当たりそうな刀をまず避けて、次に当たりそうな切っ先を避ける。そして敵に隙があればそちらから斬るというように、時間を切り分けて1人ずつ斬っていけば、理論的には何人相手でも戦えるという考え方です。
「足が速くないと成り立たない戦法だよね」というツッコミの余地はありますが、とても合理的な考え方ですよね。