「20倍の目標で考えてみろ」
鶴羽樹会長は「M&Aを手掛けるようになったきっかけは、当社が50店舗になった1985年ごろ、当時社長だった現名誉会長の兄(鶴羽肇氏)が、その20倍の目標、1000店の出店を目指そうと言ったことだった。
「『いつできるかちょっと自分で考えてみろ』と言われ、既存店に対して毎年15%ずつを出店しようと決めた。そうすれば2011年の5月までには達成できると単純に考えた。ところが、よくよく計算すると、毎年15%ずつは出店できない。出店数がものすごく多くなり、自力では無理。それで考えたのがM&A。他社と一緒になる、いわゆる合併をしてやっていこうと思い、そこからすべてが始まった」と語る。
ツルハのM&A戦略は、買収先の社名や屋号はそのままで、社長も残留して経営を続けてもらうのが基本。そしてすべての会社がその後に利益を伸ばしている。
買収先に求めるのは営業利益を上げること
小売りが事業規模を広げるのはメーカーとの交渉力を上げ、調達や管理のコストを下げて収益性を高めるためだが、ツルハ自身が買収先のノウハウを取り入れてグループ力を引き上げている。くすりの福太郎の小川久哉社長やツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本(TGN)の村上正一社長ら4人はグループ入り後、ツルハHDの役員も兼務する。
地方の有力企業のトップの職務を継続しながら業界首位を競う大手の役員としても腕を振るうチャンスが広がる。ツルハHDにとっては買収を通じてマネジメント層の人材を厚くできるメリットがある。
また、事業会社同士での出向や研修、応援などの人事交流は、店舗指導のスーパーバイザーや薬剤師、経理など多様な職種や階層で活発に行われているのがツルハグループの特徴。事業会社の社長やスーパーバイザーによる会議などを通じ、気軽に情報交換ができる土壌が整っている。
「各社のトップに言うのは営業利益を上げてくれということだけ」。ツルハHDが事業会社に出す指示について、鶴羽樹会長はあっさりと言い切る。一方で買収によるメリットを引き出すため、経理やシステムの業務は札幌市のツルハHDに一本化している。