屋号・ビジネス手法は押しつけないが…

単にM&Aだけでは終わらない、合併後のスムーズな事業統合プロセスがツルハのもう一つのお家芸だ。モノを言うのは買収の半年後ごろをターゲットとした「統合作業パッケージ」。商品調達や管理業務などあらゆる統合作業の段取りをまとめたものだ。

自らの屋号やビジネス上の手法を押しつけない代わりに、相乗効果を出すための融合には人もカネも惜しみなくつぎ込む。買収先企業の店舗営業の自主性を重んじつつ、営業利益水準の向上を絶対命題とする独自のPMI(M&A成立後の統合作業)戦略は、同業の企業をひき付ける。

北海道・旭川から全国チェーンに駆け上った余勢を駆って店舗のメディア化に取り組む。年間1200万~1300万人の会員が店舗で買い物をするツルハの店頭を生かす戦略で、自社のデータを活用した広告事業に参入した。

来店客の購買データと、アプリなどの会員情報を活用して「ツルハADプラットフォーム」を構築。2020年8月からインスタグラムやユーチューブ、ツイッターなどに新商品などの広告配信を始めた。化粧品や日用雑貨のメーカーを中心に広告主を獲得し、既に年間数億円規模の事業に成長しているという。

全国に多くの実店舗を持つからこそ、広告がどれだけ閲覧されたかにとどまらず、閲覧者の何%が来店し、何%が購入したかといった広告効果まで測定できる。

またツルハHDは以前から出店エリアで“インクが染みていく”ようなドミナント展開を進めている。そこに魅力を感じてメーカーはツルハに広告を出す。膨大な顧客データを持っている企業は、その蓄積を生かして広告プラットフォーマーにもなれることを、ツルハHDの例は示している。

POSデータ活用でメーカー軸→顧客軸の接客に

一方、デジタル活用による業務の効率化の取り組みとしてデジタル化粧品台帳を導入。POS(販売時点情報管理)データとの連動でマーケティングに生かす段階に入っている。

先にあるのはカウンセリング販売の強化だ。業務の効率化によって接客時間を創出し、新規会員の獲得と売上拡大につなげる。「いままでのメーカー軸ではなく、顧客軸の管理によって、よりお客さまに寄り添った接客につなげられる。データ化によって、お客さまの購買履歴が全店で把握でき、どこの店舗でも、きめ細かな対応が可能になる」(鶴羽社長)。

スマホをPOSデバイスに近付ける手元
写真=iStock.com/by sonmez
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シフト作成支援システムの導入を拡大するほか、新たに医薬品接客ツールも開発した。店舗のタブレットを使って、顧客と従業員がやりとりし、症状に合わせた医薬品を推奨する。新入社員を含め、従業員の接客、商品知識のレベルアップをサポートし、リアル店舗の機能強化につなげる。

先行して導入しているシフト作成支援システムはツルハとレデイ薬局全店に導入している。「シフト作成時間の短縮のほか、残業時間やパート・アルバイトの勤務時間の適正化、見える化によって店舗間格差のバラツキを改善する。さらに月次ではなく1日単位の人時管理の効果を発揮していく」(同)という。