中高6年間を楽しく過ごすための条件は上位3分の1
では、中学受験で勉強をやらされてきた子供たちは、みんな深海魚になってしまうのか。そんなことはない。成長とともに自分で勉強できるようになる子もいれば、環境が変わり周りの友達から刺激を受けて勉強を頑張り出す子もいる。
付属校であれ、進学校であれ、中高6年間を楽しく過ごしたいのなら、上位3分の1に入り込んでおくことをすすめする。全教科ではなくてもいい。1、2教科でも上位3分の1に入っていれば進路の選択肢が広がり、何より自分に自信がつく。10代において、この“自信”がとても重要だ。自分に自信が持てる子は、一見歯がたたないような難問を前にしてもひるむことなく、「まずはやってみよう。きっと答えが見つかるはずだ」と手を動かし始め、考えようとする。そして、同じようにいろいろなことに対して、挑戦してみようという気持ちになれるからだ。
そうはいっても、上位3分の1に入り込むには相当努力をしなければ難しいのではないか、と思うかもしれない。でも、考えてみてほしい。中学受験はわずか数点の差で合否が分かれる世界だ。その学校に合格できたという時点で自信を持っていいし、入学時においてはほとんど差がない。だからこそ、スタート地点でほんの少し前に進んでおくと有利になる。このほんの少し前に進んでおくための学習が、その後の学習習慣を維持させてくれる。
受験が終わってすぐに勉強に向かう必要はない。まずは2週間くらい思いっきり遊ばせてあげてほしい。すると、次第に暇を持て余すようになる。そしたら、「少しだけ中学の準備をしておこうか」と声をかけてみる。
もう中学生になるのだからと、いきなり手を離してしまうと、子供は戸惑ってしまうので、最初だけ気に掛けてあげるようにしよう。春休み中にやっておくべきものは、中学から新たにスタートする数学と英語の2教科のみでいい。学習量はこれまでの3分の1程度に減らしていいから、数学なら基礎だけ先取りしておき、英語はNHK基礎英会話の2カ月分だけやっておけば十分だ。たったそれだけでアドバンテージになる。
数学を学習する際には、中学受験では正解さえ出ればよしだったが、数学は途中経過を書くことが大事であることを伝えてあげてほしい。そうやって、中学の勉強のやり方を教えてほしい。少しずつでもいいから、毎日やることが大切だということを。そして、1学期の中間テストで成績上位を狙う。ここで良い結果を出すことができた教科があれば大きな自信となるだろう。
その後は徐々に手を離し、子供自身に任せてみる。もし、1学期の中間テストで思うような結果が出さなかったとしても、学習習慣さえあれば夏休み中に軌道修正ができる。そして、2学期のテストで上位3分の1に入り込むことができれば、「よし、この調子で頑張るぞ!」と子供自らが頑張るようになる。そうなったら、もう心配はいらない。
中学受験は人生のゴールではない。中学受験を通じて培った“学びの姿勢”が本当に生きてくるのはこれからだ。