「行政主催のイベントではないから警備計画はしない」
事故後は行政、現場、当事者それぞれへの責任を追及する声が上がっている。
韓国の日刊新聞であるハンギョレ新聞は「梨泰院惨事は行政惨事だ」と批判。管轄区域である龍山区は行政主催の行事ではないという理由で安全管理計画を立てていなかったとしている。
安全対策を立てたのは管轄のソウル龍山消防署のみで、出動したのはたったの消防隊員48人。またソウル警察庁によると警察官137人を配置したとしたが、うち制服警官は58人のみ、ほか多くは麻薬・風紀取り締まりのための私服警官だったという。
90年以降韓国で相次ぐ「人災」
韓国では、1994年に死者32名を出した聖水(ソンス)大橋崩落事故や、1995年に502人の死者を出した三豊(サンプン)百貨店崩壊事故など、多数の死者を出す大災害が定期的に発生する。いったいなぜなのか?
百貨店事故では建物の安全基準と救急体制が見直されたが、その後も地下鉄放火事件(2003年。192名が死亡)など事故が相次いでいる。
地下鉄火災では乗務員の安全教育、テロ対策、災害対応システムの作動すべてが不足していたことが明らかになった。そこには、政府担当者のたらい回し体質が影響しているという見方もある。
2014年に起きたセウォル号沈没事故でもそれが顕著に表れ、当時の安全行政部と海洋警察庁の間で責任のなすりつけ合いが起きている。
こうした一連の災害における反省が受け継がれていない点が今回の惨事につながったとみてもおかしくない。過去の災害から学んでおくべきことを政府が統括しきれていないのである。