「有料アカウントの使い回し」で会員数減少も

世界的に契約会員数の伸びが鈍化し微妙な感じになっているNetflixが、11月4日から全世界で「広告つきベーシックプラン」という割引プランを導入するぞと突然言い出し、コンテンツ業界で結構な騒動になっています。

カリフォルニア州ロスガトスに本社を置くNetflix
写真=iStock.com/JasonDoiy
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これまでNetflixは閉じられた有料会員だけにコンテンツを提供することでビジネスを拡大してきました。ところがディズニーやアマゾンとの激しい会員獲得競争が始まり、雲行きが怪しくなっています。2022年1~3月期決算では会員数が過去10年で初のマイナスに転じ、続く2022年4~6月期の決算では、前期より97万人の会員減となりました。

もちろん、Netflixのビジネスを単体で見る限りはまだまだ盤石で、有力なコンテンツで引き止められている会員たちからの評価は引き続き高くなっています。直近の2022年7~9月期決算では会員数も241万人の増加に転じています。

それでもユーザーがサブスクリプション(月額課金)によるオンデマンド放送(俗に、SVOD事業者と言います)がもたらす体験・エクスペリエンスに慣れてきてしまい、人気のドラマや映画を一通り観終えるとあっさり解約してしまったり、家族や仲間内で有料アカウントを回してお金を払わずに楽しむスタイルが一部でかなり定着してしまったりと、一本調子の成長がむつかしくなっているのもまた事実です。

「米国で決定済みで、日本だけ止めることは難しい」

ITmediaで山本竜也さんが解説しているように、これらの会員向け動画配信サービスにおいて本来ならば広告付き割引プランを導入することはビジネスモデルの大幅な変更を意味するため、本来は1年ないし2年かけて導入を進めることを検討すると発表されていました。業界に詳しくない読者はぜひご一読ください。

ところが、Netflixが8月下旬ごろになって、広告代理店などに「広告つきプランを日本国内でも展開するので、日本のコンシューマー向けに、動画の途中で挿入する15秒尺か30秒尺の動画広告を受注したい」とダイレクトに申し入れするようになっています。

それも、日本国内のすべてのコンテンツをNetflixに供給している事業者(テレビ局やアニメ会社、映像制作会社など権利者、制作者を問わず)に対して「例外なくすべてのコンテンツが広告付きプランとなる」としたうえで「権利処理および広告セールスの問題、同一性保持権の問題の3点については、日本国内の複数の放送局から抗議されている状態であるが、広告付き配信を行うことは本国(アメリカ)で決定済みの話である。日本だけ広告配信を止めることは難しい」と通達してきました。要するにNetflixの日本国内部門は広告つき動画配信に問題があることは承知したうえで、なお広告つき配信を行う決定のまま強行していることになります。