通勤が減ったグリーン車はもうかるのか?

先に述べたようにコロナ以前の2019年、中央線(中野→新宿間)のピーク時間帯(7:40~8:40)の平均混雑率は184%だった。それが2021年には大幅に減少し、120%となっているのである。混雑が緩和したことで着席需要は減るのではないか。

しかし結論から言えば大きな影響はないだろう。筆者も平日朝に大宮から宇都宮線・高崎線のグリーン車を利用することがあるが、ラッシュのピークを過ぎていても座席はほぼすべて埋まっていて、デッキに立って利用している人がいることもある。ちなみにグリーン車は着席しない場合でも同額の料金が必要だ。

両路線のコロナ前後の混雑率の変化を見てみると、高崎線(宮原→大宮間)は2019年の162%(6:57~7:57)から2021年の114%(同)、宇都宮線(土呂→大宮間)は2019年の137%(6:56~7:56)から2021年(7:02~8:02)の89%と大幅に減少している。

実際には宇都宮線は今年3月のダイヤ改正で朝ラッシュピークの運転本数が3本減便されているので現在の混雑はもう少し高いはずだが、いずれにせよ追加料金を払ってでもグリーン車に乗りたいという人は少なくないようだ。コロナで他人との密着を避けるために着席需要が増加したという見方もある。

中央線には通勤特急も運行されており、早朝に上り「はちおうじ」2本、「おうめ」1本、夜に下り「はちおうじ」4本(1本は臨時)、「おうめ」2本(その他「かいじ」3本)が設定されている。

ラッシュアワーの列車の中
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経営苦のJRにとっては喉から手が出るほど欲しい

特急といっても列車本数の多いラッシュ時間帯を走るため速度は遅く、東京―八王子間の所要時間は中央特快・通勤特快・通勤快速とほとんど変わらない。快速でも10~15分しか変わらない。つまり「特別急行」とは名ばかりで着席できることを売りにした列車であり、特急でなくとも競争力が著しく損なわれるということはないだろう。むしろどの時間、どの駅からも利用できるようになるメリットのほうが大きい。

「はちおうじ」の定員は674人、「おうめ」は524人なので、18時台~22時台の下り列車で提供されるのは計3744人。これに対して全列車にグリーン車を連結すれば、18時台~24時台に94本の快速(通勤快速・中央特快含む)が設定されているので、1編成あたり180人で計1万6920人になる。

座席が埋まらない列車もあれば、立席での利用がある列車もあるだろうから、実際にどれくらい利用者がいるかは想定しづらい。だが仮に夜ラッシュ下り全列車の座席が埋まったとすると780円×1万6920人、1日あたり約1300万円、年間なら約26億円の増収になる。コロナ禍で経営が苦しいJRにとっては喉から手が出るほど欲しい収入だ。