“負担増”の秋~10月1日から変わった暮らし
モノやサービスの価格上昇は昨年からの話だが、今回は食品や水道光熱費だけでなく、生活に関わるさらなる値上げ・負担増となる改正ラッシュが続いている。もう値上げニュースはうんざりだという人も多いだろうが、家計相談を受けていて、そうした基本情報を知らずに後悔する人が多い。
例えば、誰もお世話になる可能性がある病院関係だ。
●75歳以上の後期高齢者の医療費負担が1割から2割に引き上げ
単身世帯200万円、複数人世帯320万円以上の家庭が対象となり、厚生労働省の資料によると後期高齢者の2割370万人が対象。緩和措置として、3年間、外来診療での1カ月あたりの負担金額の増加幅を、最大3000円までに抑えるしくみが設けられる。注意が必要なのは、これはあくまでも「増加幅」であること。高齢者の中には「月3000円を支払えば済む」と勘違いしている人も少なくないと見られる。
●大学病院などを含む、ベッド数が200床以上ある大病院を紹介状なしで受診する場合の特別料金(選定療養費)も値上げ
初診の場合、「医科」ではこれまで5500円以上だったところが7700円以上、「歯科」では3300円以上が5500円以上に(いずれも消費税込み)。近所だからと、うっかり近所の大学病院などを受診して、会計時、請求額に「え? なんでこんなに高いの⁉」と驚くようなことがないよう、病院選びも注意してほしい。
一方、稼ぎの面でも注意が必要な面がある。
物価が上がり、少しでも収入を増やそうと、パートやアルバイトに精を出す人もいるはずだが、社会保険の「106万円の壁」の適用も拡大になった。
●社会保険の「106万円の壁」の適用条件が拡大
「106万円の壁」とは、2016年10月から新たに設けられた社会保険の加入対象になるかどうかの基準。通常、社会保険が適用になる年収基準は130万円(月額10万8000円)以上で、これを超えると、例えば、パート妻は夫の扶養から外れて社会保険料を支払わなくてはならない。それが、一定の要件を満たす場合、106万円(月額8万8000円)以上のパート妻も社会保険に加入が義務付けられた。
10月1日から、この要件が改正され、雇用見込みが「継続して1年以上」から「継続して2カ月を超える」に、会社の規模が「501人以上」から「101人以上」(2024年10月1日から「51人」)と、適用範囲が拡大されている。
国としては、高齢者の増加で、膨らむ一方の社会保障費を何とかしたい。非正規雇用のパートやアルバイトだろうが、1人でも多くの国民に社会保険料を払ってほしいとうわけだ。
ちなみに、年収106万円の場合の社会保険料は40歳未満が年間約14万8400円。40歳以上なら介護保険の被保険者となるため年間約15万8000円になる(※)。
社会保険料は実に年収の14~15%を占め、その総負担額は「月収2カ月分近く」にもなり、手取り月収減に困惑する人も多くなるに違いない(負担する分、将来的に受け取る年金額は増えるが)。
※協会けんぽ(東京都)の場合、健康保険料:介護保険の第2号被保険者に該当しない場合9.81% 介護保険の第2号被保険者に該当する場合11.45%、厚生年金保険料:18.3%
出所:全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」