特別な世界観やこだわりでファンを魅了する「憧れタイプ」

「憧れるファン」を増やす、憧れタイプのファンマーケティングでは、「完璧」「神聖」「感情」の3つの要素が大切になる。人は、「完璧さ」を備えた対象に憧れやすい。現実にはないような完璧な存在の美しさやカッコよさ、夢のようなモノや空間。そうした完璧さに憧れを抱き、ブランドのマーク、商品のデザイン、広告などの「すべてが最高!」と心酔する。憧れが「神聖」まで行き着くと、「好き」を超えて、ファンは「信者」と呼ばれるほど熱狂的に、対象の商品・サービスに没頭していく。

憧れるファンを増やすためには、ファンの感情を刺激して満足させる、ポジティブな情報発信が重要だ。「これだけ優れている」「こんなに高い技術力だ」といった理屈も大事だが、それだけでは、信頼はされても、憧れは持たれにくい。また、憧れの対象になるためには、商品開発における苦労の物語のようなネガティブな面を含む情報は、かえって邪魔になる可能性がある。「ラグジュアリー」「ハイクラス」「ご褒美」といった感情的なニーズを満たしてくれる、ポジティブな情報こそが重要になる。

憧れタイプのファンマーケティングでは、特別な世界観やこだわりでファンを魅了することで、高い価格や価値を追求できるようになる。一方で、ファンの思い描く「憧れ」が強くなるあまり、「ふさわしくない」と判断されると批判されやすく、1つの失敗がイメージを崩してしまったり、それゆえにリスクのある挑戦ができなくなったりする側面もある。

使っていると周りから一目置かれる「スノーピーク」

日本では、ブランドに憧れるファンへ、商品・サービスを「高く売る」というビジネスはなかなか上手くいかない。自動車・時計・アパレルなど多くの分野で、憧れタイプの成功ポジションは欧米ブランドに占拠されているからだ。そんな中で、スノーピークは、「キャンプ場でスノーピークのロゴが入った道具を使っていると一目置かれる」と憧れられるブランドとして、ファンを増やすことに成功している。新潟県三条市の金物問屋「山井幸雄商店」から始まり、1980年代後半からアウトドア・キャンプ用品へ本格進出したスノーピークは、高品質でデザイン性の高い、高価格帯の商品でファンを開拓し続けている。

キャンプ場
写真=iStock.com/Prapat Aowsakorn
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