アパレル業界でも、パーソナライゼーションを狙った企業が注目されている。これまでのアパレル業界は、スウェーデンの「H&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)」、スペインの「ZARA」、日本の「ユニクロ」といったグローバルSPA(製造小売業)が世界を席巻してきた。いい製品を大量生産し、チェーン展開して手頃な価格で販売する戦略だ。

中国発のファッション通販「SHEIN(シーイン)」

ところが、まったく異なる戦略で急成長してきたのが、中国発のファッション通販「SHEIN(シーイン)」だ。08年にクリス・シュー氏が広州市で創業し、現在はシンガポールに本社を移してロードゲットビジネスという会社が運営している。中国国内では販売しないで米国、英国、日本など世界150カ国以上で事業を展開している。販売店はなく、100%オンライン通販だ。売上高は非開示で、21年は2兆円を超えたと推定されている。

最大の特徴は、毎日、数千点の新製品を投入することだ。ユニクロの年間生産品目数が約1000点あるのに対して、SHEINは15万点に達する。超少量多品種生産によって、100着しかない服が瞬時に売り切れるといったことが起こる。同じ服が世界にわずかしかない点がパーソナライゼーションになるのだ。

同社の時価総額は、すでにユニクロ(ファーストリテイリング)、ZARAを抜いている。販売店がないから不動産や人件費などの固定費が少なく、利益率がものすごく高いのだ。従来とはまったく違う新しい企業戦略が成功した例だ。

パーソナライゼーションの重視は、高額商品にも見られる。イタリアの自動車メーカー「マセラティ」では、ユーザーが仕様を決めてスタイリングできるパーソナライゼーションのプログラムがある。「世界に一台しかない、あなただけのマセラティ」を提供しているのだ。

ソロ社会の新たな生活者像が必要となるのは、企業だけではない。日本政府には、単独世帯の増加を視野に入れた「孤独・孤立対策担当大臣」がいる。しかし現在は、内閣官房に35もある政策担当室の1つにすぎない。本格的なソロ社会の到来に備え、少子化対策、孤独・孤立対策の手を打つべきだ。

(構成=伊田欣司 写真=時事通信フォト)
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