経営の神様の原点は野心と挫折

京セラの稲盛和夫名誉会長が2022年8月24日、京都の自宅で老衰のため息を引き取った。享年90だった。

京セラ社長時代の稲盛和夫氏(1984年)
京セラ社長時代の稲盛和夫氏(1984年)。(Kodansha/アフロ=写真)

1959年、27歳のときに仲間と京都セラミック(現京セラ)を立ち上げ、ファインセラミックスの技術で世界的企業へと育て上げた。その後、84年の第二電電(現KDDI)の創業、2010年から12年の「JALの再生」にも成功。経営者としての実績は随一だ。

稲盛氏が“経営の神様”と呼ばれる理由は、経営手腕だけではない。1997年に65歳で在家得度して僧侶となり、人生哲学を説いた『生き方』はロングセラーになった。海外にもファンが多い。中国ではGE元CEOのジャック・ウェルチに代わって私の本が飛ぶように売れていた時期があったが、今やその座も稲盛氏の本に取って代わられた。その人気ぶりは、中国外務省が稲盛氏の死去を受けて定例会見で弔意を示したことからもうかがえる。

稲盛氏の訃報に関するニュースでは、「フィロソフィ」などの哲学や心を教える盛和塾がよく取り上げられていたが、今回は世間にあまり知られていない実像を紹介したい。