子供にとって健康的な生活リズムとはどんなものか。熊本大学名誉教授の三池輝久さんは「小学生は『早寝・早起き』を心掛けて、1日9時間程度は睡眠時間を取ったほうがいい。『遅寝・遅起き』は肥満や不登校の原因になる可能性があるため、生活リズムを修正するために処方薬に頼るのも一つの手段だ」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、木田哲生、三池輝久『親子の「どうしても起きられない」をなくす本』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

布団をかぶり携帯電話を見る少年
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人は本来であればどの程度の睡眠が必要なのか

入眠が深夜になりやすい現代人は、平日の睡眠がどうしても不足しがちです。では、本来であればどれくらい眠るのが望ましいのでしょうか。年齢ごとに解説していきます。

ヒトが生まれてから生後1カ月までを、新生児期と呼びます。新生児は、睡眠と覚醒を3〜4時間ごとに繰り返す「超日リズム」のなかで生きています。昼夜の区別が明確ではなく、1日中眠りを中心として過ごします。1日の睡眠時間は13〜16時間程度です。

生後2カ月を過ぎ乳幼児期に入ると少しずつ夜にまとまって眠るようになり、5〜6時間睡眠が持続するようになります。生後3〜4カ月では8〜9時間、6カ月では個人差はあるものの8〜11時間、ほぼ夜を通して眠りが持続するようになります。幼児期から小学校低学年の子どもは、乳幼児期とほぼ変わりなく、9〜11時間程度の睡眠が必要です。

小学4年生では若干短くなって9時間半くらいの睡眠でも良いとされています。小学校高学年になると少しずつ必要な睡眠時間も短くなってきます。小学5年生では9〜10時間程度になります。中学校に入学すると、小学校との生活の変化についていけず、不適応を起こし不登校やいじめが発生しやすくなる時期、いわゆる中1ギャップが待っています。

これは中学入学後の生活環境の急激な変化にともない、平均睡眠時間が30分以上短くなる現象が関係していると考えられています。この急激な生活の変化に脳機能がついていけないのは仕方がないかもしれません。しかし、お子さん一人ひとりが自分で意識できるように、対応を考えるべきでしょう。