※本稿は、木田哲生、三池輝久『親子の「どうしても起きられない」をなくす本』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。
日本は世界でも1、2を争う“短眠国”
人にとって眠りは、脳をつくり、育て、傷んだ部位を修復し、機能を維持し高めることで、全身の生命維持機能を守る時間です。良い眠りとは、不足がなければ良いという単純なものではなく、時間帯、持続性、規則性が必要で、かつ重要な要素です。
たとえば、眠りを削って勉強を頑張っても、短期間では成果が上がることもありますが、長期間ではむしろ記憶をつかさどる脳の海馬に炎症が起こり、勉強ができなくなる恐れもあります。本稿では、眠りの意義を医学的に説明します。現代の日本の成人の睡眠時間は7時間12分と報告されています。日本は、実は世界でも1、2を争う“短眠国”です。
平成26年版厚生労働白書では、30カ国中最下位となっています。さらに、成人だけではなく3歳までの乳幼児の睡眠でも、世界17カ国の比較でもっとも睡眠時間が短いことが知られています。中・高校生では、平日の睡眠が6時間以下という学生が半数を超えると報告されています。学校生活、友人とのSNSなどでのコミュニケーション、宿題、塾などの習い事、受験準備などで忙しく、睡眠を削らざるを得ないのかもしれません。
短眠生活で睡眠不足になり、それが長い間にわたって蓄積されると「睡眠負債」となります。「睡眠負債」がたまると気がつかないうちに少しずつ脳機能や認知機能が低下します。でも、自分自身の能力低下に気づけない人がほとんどでしょう。たとえば、以前ほど思うようにことが運ばない、勉強の意欲が湧かず、友人関係もうまくいかないといったサインがあらわれますが、それが日頃の睡眠不足や不規則な生活によるものだと考えるお子さんは少ないのではないでしょうか。
このような生活を続けていると、将来成人病、うつ、悪性腫瘍、認知症を発症するリスクが高くなります。脅したいわけではありません。それほど睡眠は重要なのです。ぜひ正しい知識や予防法を知って、実践していってくださいね。