一流のアスリートは10時間以上の睡眠時間を確保している

①子どもの発達などにかんする影響

世界で活躍している一流のスポーツ選手は、トレーニングだけを積んでいるのではありません。彼らの多くは、眠りをしっかりとるよう心掛けています。たとえば、サッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手、本田圭佑選手、長谷部誠選手、ゴルフの石川遼選手らは10時間睡眠を確保していますし、テニスのロジャー・フェデラー選手は12時間睡眠が必要だといっています。

ニュージーランドの大学生たちの研究や、アメリカの大学のバスケットボール選手などの調査研究では、睡眠時間は8時間以上必要だという結果が報告されています。フクロウ型で慢性的な睡眠不足をもつ場合は、生活習慣にともなう慢性的睡眠不足症候群と呼ばれ、日中の眠気、不注意が生じるために学業成績が伸びず、部活中に怪我をしやすいことや、交通事故に巻き込まれやすいことが報告されています。

それだけではなく、睡眠不足が続くと、物忘れなど記憶の障害のほか、ものごとの判断や推測・理解、計算・学習能力、思考能力、言語能力などを含む認知機能の低下、つまり脳の高次機能に問題が生じるようになります。このような認知機能の障害は、子どもたちの学習意欲を損なわせて、学業やスポーツにも影響をもたらします。生活の質そのものを下げてしまうため、②で説明するような学校への行き渋り、最終的には不登校が起こります。

極端な「遅寝・遅起き」は生活習慣ではなく睡眠障害

②子どもの心にかんする影響

不登校状態について、「我が子は絶対にならない」「ウチの子は大丈夫」などと考えていませんか? でもそれは、フクロウ型の生活が身についているお子さんの、すぐ隣にあるものなのです。

フクロウ型の若者たちには、抑うつ症状や不安症状、節度を保った行動の困難性などの心理結果が多く報告されています。また、慢性の睡眠不足が「うつ」の原因・背景であることは精神医学では常識となっています。フクロウ型の生活が続くと、睡眠不足とその蓄積のせいで最終的に「遅寝・遅起き状態」が生じ、学校生活に適応できなくなってしまいます。この「遅寝・遅起き」の生活時間帯のずれは「睡眠・覚醒相後退障害」と呼ばれる立派な1つの睡眠障害です。

母親に励まされる子供
写真=iStock.com/takasuu
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実は、これこそが不登校の実際の原因であることが、日本だけではなく国際的にも知られるようになってきました。フクロウ型の生活にともなう社会的時差ぼけ状態や、さらに進行して睡眠・覚醒相後退障害が起こると、登校そのものがむずかしくなります。不登校状態に至るまでは、「遅寝・早起き」にともなう長期間の睡眠不足生活を送っているので、脳機能はかなりのダメージを受けており、認知機能をはじめ生命維持機能が疲れ果てていることも少なくありません。

先ほどお話しした通り、このような認知機能の低下によって不登校が起こりやすくなります。