憲法改正や家族観の共有から「異端」と結びつく政治

安倍元首相が政権の座にあった時には神道系の団体との密接な関係が、その死後には旧統一教会との関係がクローズアップされている。この時間差もさることながら、政治と宗教の関係を見直すべきという声がより強まっているように思われることも興味深い。

これは、神道系の宗教が日本の政治と結びついていても「まつりごと」としてさほど違和感を持たない日本人でも、異端的なキリスト教で韓国ナショナリズムの特徴も持ち、霊感商法などで人びとに大きな被害をもたらしてきた旧統一教会が、日本の政治に深く浸透していた事実に衝撃を受けていることの表れと考えられる。

韓国にある世界平和統一家族連盟の教会の前で
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歴史家の安丸良夫は、戦前の天皇を中心とした国体論を正統とする説のなかに生まれた異端的な宗教運動を「O(オーソドキシィ)異端」、まったく異質な系譜に連なるものを「H(ヘテロジーニアス)異端」と名づけた。宗教社会学者の塚田穂高はこれを戦後日本の政教関係に応用している(『宗教と政治の転轍点 保守合同と政教一致の宗教社会学』花伝社、2015年)。

この区別を用いると、国家神道の流れをくむ神道政治連盟や日本会議は正統的宗教ナショナリズムに近いO異端、韓国出自でキリスト教系の統一教会はH異端ということになるだろう。そのうえで統一教会が独特なのは、憲法改正をめぐる問題や家族観などでは、政権与党の自民党とむしろ考えの一致が見られることである。

日本は政教分離の国であるはず

統一教会は、霊感商法などで日本の国民を搾取し、嫌がる信者を虐待してきたという点に注目すれば、まさしく反社会的と呼ぶのがふさわしい団体である。しかし、自民党にとっては、手堅い票田を持つ宗教団体として選挙を応援してくれるありがたい存在であり、少なくとも面と向かってこれを反社会的とは言いにくい。

市民社会にとって反社会的な相手が、政治社会にとってはそうではないとは、なかなか由々しき事態である。

ここに見られるのは、国民にあるべき主権が為政者によって簒奪され、しかもその為政者が宗教とのつながりを持つという構図である。日本は政教分離の国であるはずだが、この点はどうなっているのだろうか。

なるほど、宗教団体が特定の政党や政治家を支援することは憲法違反ではない。しかし、それは当該宗教団体が市民社会を支えるものとして機能している前提での話である。