オウム事件後、統一教会は捜査されたが解散命令には至らなかった

戦後の日本は、戦前の宗教弾圧への反省もあり、憲法で保障された信教の自由を尊重して、国家が宗教団体に介入することは極力控えられてきた。

オウム真理教の地下鉄サリン事件は世界に衝撃を与えたが、すでにさまざまな違法行為で知られていた団体に当局が介入を避けてきたことも驚きの念をもって受け止められた(ナタリ・リュカ『セクトの宗教社会学』、白水社、2014年)。

ただし、宗教団体にさまざまな優遇措置を設けている宗教法人法も、宗教法人が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をした場合には、裁判所は所轄庁の請求などにより解散を命ずることができると第81条で解散命令を規定している。そしてこの規定が事件後のオウムに適用され、1996年1月には最高裁で解散命令が確定した。

これまでに解散命令が適用されたのはオウムだけではない。

2002年には和歌山地裁が明覚寺に対して解散命令を出している(法の華三行は2001年に破産して解散)。警察庁はオウムの次は統一教会と狙いを定めており、2008年から翌年にかけては統一教会関連組織が警視庁公安部などの捜査を受けたが、解散命令請求までには至らなかった。背後には「政治の力」があったとされる(有田芳生『改訂新版 統一教会とは何か』大月書店、2022年)。

大きな違いは「政治との距離」

オウムと統一教会は、反社会的な行為をしてきた点では似ている。

大きく異なるのは、違法行為のレベルだけではなく、戦後の日本で政治的正統性を有してきた集団との距離である。オウムは真理党を結党して国政に挑んだが、全員落選した。統一教会は国際勝共連合という政治団体を作って反共を掲げ、右派政治家の庇護を取りつけることに成功した。

千代田区永田町にある自民党本部
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その点では、統一教会はむしろ神道政治連盟や日本会議と同じような位置を占めている(櫻井義秀「戦後日本における二つの宗教右派運動 国際勝共連合と日本会議」同編『アジアの公共宗教』北海道大学出版会、2020年)。政党ではなくロビー団体を作り、政策の一致する政治家を選挙で応援するというやり方である。

神道政治連盟や日本会議と自民党の関係は、2012年以降の安倍長期政権で大きく明るみに出た(菅野完『日本会議の研究』扶桑社新書、2016年など)。この宗教右派は、「宗教」であることを表立ってうたうことは少なく、むしろ隠すという特徴を持っていた。

安倍晋三元首相銃撃殺害事件を受けて、現在大きく明るみに出ているのが、旧統一教会およびその関連団体と自民党との関係である。右派で、政治と「ズブズブの関係」で、「宗教」であることを隠す傾向を持つところまで、神道政治連盟や日本会議と旧統一教会およびその関連団体はよく似ている。