統一教会に解散命令を出すことは可能なのか
旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)関連団体と関係があった現職国会議員は168名――。ジャーナリストの鈴木エイト氏が、そのリストを『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館、2022年)で公開している。
組織票で当選できた議員から、関連団体のイベントに出席ないし祝電を打った程度の議員まで濃淡はあるが、168名のうち113名が自民党議員。ここまで政治に食い込んでいたのかと驚きが広がっている。
他方、旧統一教会から被害を受けてきた人の声にも注目が集まっている(2015年に名称変更があったことに鑑み、以下では文脈に応じて「統一教会」または「旧統一教会」と表記する)。10月7日には、元2世信者の20代女性が日本外国特派員協会で会見を開いた。生い立ちや両親と教団との関係を語り、「被害者や子どもの権利が守られる国であってほしい」と述べ「教団を解散させて」と訴えた。
10月11日には、全国霊感商法対策弁護士連絡会が文部科学省と法務省に対し、旧統一教会の解散命令を請求するように申し入れた。とはいえ、宗教法人の所轄官庁で解散命令請求権を持つ文化庁の姿勢は消極的である。
社会的に問題のある宗教と政治の関係を断ち切り、被害者支援を充実させるには、現在の法律や活動の枠組みで可能だろうか。それとも法改正や新しい取り組みが必要なのか。
フランスのカルト対策「反セクト法」への2つの誤解
このような状況で、フランスの「反セクト法」が参考になるのではと、「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」などでも一定の関心を集めている。
フランス語の「セクト」は、日本語なら「有害なカルト」に相当する。フランスは厳格な政教分離と説明されることの多い「ライシテ」を国是としている国で、2001年に制定された「反セクト法」はこの国のカルト対策の姿勢を示す象徴的な法律と言える。
ただし、この反セクト法については、ともすると2つの誤解があるように見受けられる。ひとつは、この法律を導入すれば日本の問題も解決できるとするものである。もうひとつは、この法律は特殊フランス的なものだから日本にはなじまないとするものである。
もう少し腰を据えた比較をしてみる必要があるのではないか。ライシテの国の「反セクト法」とは実際にはどのようなものなのか。フランスのライシテを鏡として用いると、日本の現状はどのように映るだろうか。