20年間無敗の“雀鬼”として知られる桜井章一さんは「私の道場には、プロレス、ボクシング、武術、相撲など、格闘技のプロといわれる人たちが遊びにくる。私は彼らとよく相撲を取るのだが、筋肉すらろくにない高齢者の私がいつも彼らを押し倒してしまう」という。セブン‐イレブン限定書籍『勝とうとするな 負けの99%は自滅である』で明かされた「負けない人」の真髄を特別公開する──。(第3回/全3回)

※本稿は、桜井章一『勝とうとするな 負けの99%は自滅である』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

精神より肉体が先

勝負においては「一体感」を持つことが大切だ。心と体の一体感、相手との一体感、勝負という場との一体感。こうした一体感を持つには、そもそも“心構え”“体構え”がしっかりしていなくてはならない。

心構えと体構えは最終的に一致する。人は精神を重く見がちだが、精神より先にくるのが肉体だ。人は肉体を持ってこの世に生まれ出て、それから精神が育まれていく。

つまり、人間は「肉体ありき」の存在なのだから、心構えをしっかりしようと思えば、体構えを整えるべきなのだ。体構えがしっかりすれば、心構えも整ってくる

桜井章一さん
写真=野辺竜馬
桜井章一さんの道場「牌の音」には、麻雀をする人以外にもさまざまなジャンルの一流の競技者が教えを請いに訪れる。

考えれば硬くなる

では、しっかりした体構えとはどのようなものなのか。それは力みのない柔らかさに貫かれた体といっていい。ぐっと力の入った状態ではけっしてない。

自然界の生き物はみな、この柔らかい体構えをしている。魚には魚の、鳥には鳥の、柔らかで美しい体構えがある。彼らの動きは流れるようで硬さがどこにもない。

人間で、彼らほどの体構えができる者はめったにいない。人の体は、彼らと比べるとあまりにも硬い。

この硬さは、人が頭で考える習性を持つことに由来する。思考の動きがある限り、人は根本から力を抜いて体を柔らかくすることは難しいのだ。