現代人は体の一部分しか使っていない

頭を重点的に使う現代人は、常に体の一部分しか使っていない。

プロのスポーツ選手でさえ、体のすべてを使っている人はまずいない。スポーツは種目によって体の動かし方に一定のパターンがあって、そのパターンから外れる部分、すなわち使われない部分がかなりあるのだ。

桜井章一『勝とうとするな 負けの99%は自滅である』(プレジデント社)
桜井章一『勝とうとするな 負けの99%は自滅である』(プレジデント社)

私の道場には、プロレス、ボクシング、武術、相撲など、格闘技のプロといわれる人たちが遊びにくる。私は彼らとよく相撲を取るのだが、筋肉すらろくにない高齢者の私がいつも彼らを押し倒してしまう。

倒されたほうは「まったく理解できません」という顔をして何度もかかってくるが、結果は同じ。

私もなぜそうなるのかを正確には説明できない。

ただはっきりしていることは、私はどこにも力を入れておらず、彼らは鋼鉄のような筋肉をバリバリに緊張させた状態で組み合ってくるということだ。

力を抜いて柔らかく動く

おそらく人間の体は、一部分だけを動かすのではなく、全部を動かすことでとてつもない力と強さを発揮できるのである。すべての部分と部分がつながって柔らかく動けば、単なる足し算を超え、掛け算のようなものすごい力が生まれるのだ。

つまり、「力を抜いて柔らかく動く」のは、体全体を使わなくてはできないことなのだ。

人の心と体は最終的に一致するので、体が柔らかければ、心も柔らかくなる。体構えができれば、おのずと心構えもしっかりしてくる。

心をどう整えるかということは大切だが、力を抜いて柔らかく動くという“体使い”をふだんから心がけることも忘れてはならない。