事故当初は、主催した函館の自動車販売会社と業務委託を受けた新千歳モーターランド(アクトコーポレーション)のそれぞれの責任者のインタビューが報じられていた。
運営主体が複数になってしまうと、お互いに「安全対策は相手方の責任」、「相手方がしっかりやっているだろう」というような考えに陥りやすい。事実、誰がコース設営や安全対策を最終決定したか、現時点ではっきりしていないとの報道もある。
見落とされた「子どもへのマーケティング」の危険性
そもそもこのイベントは、函館のトヨタ関連販売会社によるマーケティングと言っていいだろう。家族連れでイベントを楽しんでもらい、子どもにもモータースポーツの楽しさを体験させることで、子どもたちに、将来免許を取得し、トヨタ車を買ってもらいたいという意図がある。
そこで問題となるのは、子ども向けマーケティングの是非だ。欧米では子ども向けマーケティングのあり方について議論が進んでおり、基準もある。子どもに対する広告やマーケティングが子どもの心身や生活習慣に悪い影響を及ぼすことが指摘され、「脆弱な消費者」としての子どもを守っている(子どもを取り巻く広告と規制の動向 )。
たとえば、スウェーデンやノルウェーは12歳未満の子どもに対する一切のテレビ広告を法律で禁止している。カナダのケベック州も消費者保護法によって13歳未満の子どもに対する広告を禁止している。
アメリカでは、CARU(子ども広告審査ユニット)が子ども向け広告についての自主規制プログラムを策定し、12歳未満の子どもに対する広告やマーケティングを自主的に審査・規制している。
日本でも、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(Save the Children Japan)が「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」を作成している。
基本原則3-1「子どもの発達や特性に配慮した広告およびマーケティング」で「安全性の確保 」をあげ、「広告およびマーケティングは子どもの生命や健康を脅かすものであってはならない」と規定しているが、業界等の自主規制でもなく、強制力を伴うものではない。
「子どもは小さな大人ではない」
今回のイベントが直接子どもに向けられたマーケティング活動と言えるのかは議論があるだろう。しかし、身体の発展段階にあり、運転免許も当然持たない子どもにモータースポーツの「味わったことのないスピード感を体験!」(本イベントちらし)させるようなイベントは慎重であるべきだし、安全第一に実施すべきものである。
会場は仮設だった。高出力のカートを子どもに運転させられる環境だったのか。危険性への配慮に欠けていた可能性もある。