「味わったことのないスピード感レンジを体験することができます!」「初めてのモータースポーツを手軽に体験でき、初心者の方でも安心して、本格的なスポーツ走行を楽しむことができます!」とアピールし、「レンタルカートは貸し出しで唯一楽しむことができる『モータースポーツ』という感じです」としている。

このように高速走行が可能なレーシングカートだが、利用条件は「身長140cm以上の方」とあるだけだ。今回のイベントでもこの基準を適用し、事故を起こした女児は身長がそれ以上であったため、このレーシングカートを運転したということだろう。

排気量は原付バイクの約4倍

ではどのようなカートであったのか。「Birel N35X」というカートで、スペックは以下の通りだ

メーカー:Birel(イタリア)
エンジン:ROBIN EX21(スバル/富士重工業株式会社)
最大出力:7.0馬力
指導方法:鍵式・セル始動

ROBIN EX21というエンジンを調べてみると、総排気量は211ccだ。原付バイク(原動機付自転車)の最大排気量が50ccだから、その約4倍となる。

こうしたカートを運転免許なしで、身長が140㎝以上あれば運転できることとなる。事故を起こしたカートは、時速40km/hほどで走行していた可能性があるとイベント責任者が報道機関に語っている。

公道を走るカートは車両の基準が定められているが、公道用ではないカートには基準がない。また、今回のコースは公道に当たらず、道交法の速度規制も適用されない。

さらに、カートのコースはジェットコースターなどと異なり、建築基準法で安全管理基準を定める遊戯施設にも該当せず、管理は事業者に委ねられているのが現状だ。その問題はすでにさまざまなメディアが報じているとおりだ。

もちろん、公的規制や基準がないからと言って直ちに危険とは言えないだろう。事故防止のためのコースの設営、コースと観客席との分離などに配慮がされているはずだ。事実、「新千歳モーターランド」での走行動画などを見ると、コース側面にはガードレールや衝突緩衝材、古タイヤが置かれ、盛り土も見られる。

あいまいな主催者側の責任

このイベントは宿泊施設の大規模駐車場で1日だけ企画されたイベントだ。それゆえに常設のコースと比べて安全対策が疎かになった恐れがある。

カートを運転していた女児はコースの直線部分でアクセルを踏み込んでしまってカーブを曲がり切れずにコースを外れ、観客席に突っ込んでしまったと予想されているが、こうした誤操作が起き得ることを想定し安全対策を講じる責任が事業者側にはあるだろう。

子どもが死亡するという重大事故が起きただけでなく、加害者の子どもも発生させてしまった点において、この事故は重大な問題を孕んでいる。