今年9月、北海道の宿泊施設で開かれたイベントで、11歳の女児の運転するカートが観客に突っ込み、2歳の男児が亡くなった。なぜ悲惨な事故が起きたのか。日本女子大学家政学部の細川幸一教授は「モータースポーツを子どもに体験させるという自動車販売会社の『子ども向けマーケティング』に問題の根底がある」という――。
軽視された安全、仮設コースで起きた悲惨な事故
9月18日に北海道函館の宿泊施設「グリーンピア大沼」の駐車場で開かれた地元自動車販売会社主催のモータースポーツ体験イベントで子どもの死傷事故が起きた。
小学6年生(11歳)の女児が運転するカートが直進路の後のカーブを曲がらず直進してコースを外れ、見物客ら5人に突っ込み、2歳の男児が脳挫傷で死亡し、もう1人の男児が軽傷を負った。見物客のいた場所とコースの間には三角コーンと樹脂製の棒で作った仕切りが置かれただけだった。
今月6日には消費者庁の公表資料「消費者安全法の重大事故等に係る公表について」でも事故事例が取り上げられた。
本イベントが行われた仮設ゴーカート場の安全対策の不備についてはかなり報道されている。筆者が問題提起したいのは、自動車販売会社の子ども向けマーケティングのあり方についてである。
トヨタの販売会社4社が主催、警察や消防も協力
イベントは、函館地区にあるトヨタ自動車の販売関連会社である函館トヨタ自動車・函館トヨペット・トヨタカローラ函館・ネッツトヨタ函館の4社が主催し、事故があったカートゾーンは、「新千歳モーターランド」を経営するアクトコーポレーションが委託を受けて運営していた。
イベント名は「函館地区オールトヨタ・クルマファンFES2022」。9月18日の一日限りのイベントで、「もっとクルマをスキになろう! トヨタが送るスペシャル1DAY!」と宣伝された。