ドイツ政府はこの間、液化天然ガス(LNG)の調達に努めてきた。9月中旬にショルツ首相はアラブ首長国連邦(UAE)との交渉をまとめており、またカタールともLNG契約の締結が間近とされている。洋上にFSRUと呼ばれる、再気化のための設備を建設中であり、今年中に1隻が、来年初にもう1隻が稼働する予定である。

そうはいっても、こうして得られたLNGだけで天然ガス需要を十分にまかなうことは難しいだろう。

他方でドイツ政府は、再エネ設備の投資を加速させるための法整備などにも努めてきたが、再エネ設備が稼働するには相応の時間を要するし、出力が天候に左右されるため、太陽光発電や風力発電はベースロード電源にはなりえない。

電力の安定供給のために

電力の安定供給に鑑みれば、来年4月以降も残る2基の原発の運転も議論されるべき選択肢である。

電気労働者とパイロンのシルエット
写真=iStock.com/zhengzaishuru
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しかし政権で勢いを増す緑の党は、これまで掲げてきた公約を優先し、来年4月の脱原発を敢行するかもしれない。その場合、緑の党は、代替手段としてすでに「時限的」として強化した石炭火力発電のさらなる強化を打ち出す可能性がある。

本来、脱炭素化を重視する緑の党にとっては、石炭火力もまた認めがたい発電手段となるが、原子力よりは支持者に受け入れやすいと考えているようだ。そうした緑の党の姿勢を民意はいつまで支持するだろうか。エネルギー危機の下で、今後もドイツのエネルギー政策が緑の党の意向に大きく左右されるのか、注視していきたい。

なお日本の場合、9月15日に電力広域的運営推進機関が発表した「2022年冬季及び2023年度の需給見通しについて」によれば、厳冬シナリオでも今年の電力需給は予備率3%を確保できる見込みだ。とはいえエネルギーの安定供給に鑑みれば、原発の再稼働のみならず、最新型の原子力・石炭火力の道を今後も模索し続けるべきではないか。

(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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