ドイツの最新9月の消費者物価は、夏季の燃料価格の割引などが終了したことから前年比10.9%と前月(8.8%)から上昇が加速、ユーロ発足(1999年)以降初となる2桁台を記録した(図表1)。

ドイツの消費者物価(1999年1月~2022年9月)
出所=ドイツ連邦統計局

インフレの元凶であるエネルギー危機に関しては、ガス不足が深刻なままである。

ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインであるノルドストリームに再開のめどが立たないどころか、複数個所に損傷が見つかる事態となっている。ドイツは冬季に向けて天然ガスの備蓄に努めてきたが、厳冬であれば当然、早期の枯渇が視野に入る。

期待されたフランスからの電力輸入に関しても、その主要な電源である原発が老朽化などで不調に陥っているため、十分な量を確保できるか定かではない。

これまでの原発の閉鎖で、ドイツの電源構成に占める原発の割合は10%にも満たないが、現状のエネルギー危機に鑑みれば、ドイツに脱原発を完遂するような余裕はないわけだ。

連立与党「緑の党」の甘い見通し

そもそも緑の党は、ロシアがウクライナに侵攻した直後において、エネルギー危機が生じても脱原発は経済的にリーズナブルであると説明していた。

3月8日、緑の党が閣僚ポストを担う連邦経済・気候保護省(ハーベック副首相が大臣を兼任)と連邦環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省が連名で発表した報告書がその象徴だ。

とはいえ、その後ドイツのエネルギー不足は深刻さを増し、6月には時限的とはいえ石炭火力の強化という、緑の党が掲げる「脱炭素化」に反する決定がハーベック副首相らによって下された。

脱原発の延期も時間の問題であったが、いずれにせよ緑の党の見立ては甘く、現実は同党の主張とは相容れない方向に推移している。