日本の電力不足が深刻化している。国際大学の橘川武郎教授は「岸田文雄首相は原発の新増設や運転期間延長に言及し、あたかもこれで電力不足を解消できるように受け止められているが、今冬には到底間に合わない。今後の具体的な計画も示されておらず、政策転換として評価するのは時期尚早だ」という――。
記者団の取材に応じる岸田文雄首相=2022年9月6日、首相官邸
写真=時事通信フォト
記者団の取材に応じる岸田文雄首相=2022年9月6日、首相官邸

「次世代革新炉」に踏み込んだ岸田首相

8月24日のGX実行会議で岸田文雄首相と西村康稔経済産業相が行なった原子力に関する発言が、一部のメディアで「原子力政策を転換したもの」ととらえられ、大きく報道されている。そこで岸田政権が原子力政策遅滞の解消に向けて年末までに政治決断が求められる項目とし挙げたのは、

(1)次世代革新炉の開発・建設
(2)最長60年と定められている運転期間の延長を含む既設原子力発電所(原発)の最大限活用

などの諸点であり、あわせて

(3)原子力規制委員会の許可(原子炉設置変更許可済み)を得ながら再稼働を果たしていない7基の原子炉の来夏・来冬以降の再稼動についても言及した。

このうちとくに「政策転換」とみなされているのは、(1)の点である。「原発のリプレース(建て替え)・新増設はしない」という政府の従来の方針を転換したものではないか、と言うのである。

本当にそうだろうか? 本稿では、この点を掘り下げてみたい。

政策転換と判断するのは時期尚早

結論から言えば、「政策転換」と判断するのは時期尚早だと考える。そう考える根拠としては、以下の3点を挙げることができる。

1 誰(どの事業者)が、どこ(どの立地)で、何(どの炉型の革新炉)を建設するのかについて、まったく言及がない

2 電気事業者も、重電メーカーも、国内での次世代革新炉の建設について、具体的な動きを示していない

3 「次世代革新炉の開発・建設」を本気で行うのであれば、「既設原発の運転延長」を行う必要はなく、上記の(1)と(2)の両者を同時に掲げるのは論理矛盾である