動かしたくても動かせない事情がある原発ばかり
そもそも、(3)の「7基の原子炉の来夏・来冬以降の新たな再稼動」に岸田政権がどうコミットするのかも、不明確である。
原子力規制委員会の許可を得ながら再稼働を果たしていない7基の原子炉のうち、東京電力・柏崎刈羽6/7号機は、東京電力の不祥事によって、規制委員会の許可自体が事実上「凍結」された状態にある。日本原子力発電・東海第二は、事故時の避難計画の不備を理由に裁判所によって運転を差し止める判決が出ている(原電側と原告側がそれぞれ控訴)。
残りの4基、つまり東北電力・女川2号機、関西電力・高浜1・2号機、および中国電力・島根2号機の4基は、運転再開に関する地元自治体の了解も取り付けており、再稼働へ向けての準備が進んでいる。ただし、女川2号機と島根2号機については、再稼働のために必要な工事が、岸田首相の掲げた「来夏・来冬」までに完了しそうにない。
したがって、柏崎刈羽6/7号機、東海第二、女川2号機、島根2号機の5基の来夏・来冬における再稼動は、政府の強力なコミットがない限り実現しないことになる。では、岸田政権は、これら5基の再稼動に対して、どのようにコミットしようとしているのだろうか。肝心のこの点が、現時点では、皆目わからないのである。
具体的な施策がない限り「ポーズ」で終わる
岸田首相は、今年7月14日の記者会見でも、来年1~2月の電力危機を乗り切るために、「9基の原発を再稼働させる」と胸を張った。しかし、これら9基はすでに再稼動をはたしたものばかりであり、点検、修理のために一時的に運転を停止していたケースはあったものの、来年1~2月には稼働することがとっくに織り込み済みであった。首相は、それにもかかわらず、あたかも自分が動かすかのような言い方をしたのである。
この事例が示すように、岸田政権は、原子力に関してポーズをとるきらいがある。「7基の原子炉の来夏・来冬以降の新たな再稼動」を打ち出しても、そのためにどのような施策を講じるか具体的に示さない限り、「ポーズとり」と言われても仕方がないだろう。
そもそも今回注目を集めた「次世代革新炉の開発・建設」の検討も、単なるアドバルーンに過ぎないのかもしれない。世論の反応を見ているのである。いずれにしても、われわれ国民は、年末に向けて、岸田政権の原子力政策について監視の目を光らせる必要がある。