日本でも本場の味が楽しめる「ガチ中華」
近ごろ、世間では「ガチ中華」ブームである。ガチ中華とはすなわち、平成時代以降に来日したニューカマーの在日中国人が調理している、過度に日本人向けのアレンジを加えず中国本土に近い味を提供している中華料理店のことだ。
この名称はおそらく、従来の日本社会で馴染み深かった、醤油ラーメンや焼き餃子や天津飯などを出す日本風の中華料理店「町中華」をもじったものだろう。
余談ながら、町中華とガチ中華の中間的存在としては、地方の国道沿いの潰れたコンビニなどに居抜きで出店している謎の中華っぽい食堂「パチ中華」がある(従業員は中国東北地方の人なのに「台湾料理店」を標榜し、安い油ギトギトの青椒肉絲ドンブリや自称台湾ラーメンなどを出す)。ただ、話が逸れるのでこちらはさておこう。
ガチ中華は、首都圏では特に池袋・高田馬場・新大久保・上野・小岩・西川口(埼玉県)あたりに多いものの、上記の地域に限らず幅広く見られる。個々の店舗について詳しく知りたい場合は、ガイドブックの『東京ディープチャイナ』(産学社)や、Twitterのガチ中華開拓系インフルエンサー(阿生氏などが有名だ)の情報を参考にしてほしい。
ブームにはなったが十分に堪能できていない客も
とはいえ、個人的には近年のガチ中華ブームにちょっと微妙な気持ちもある。自分がこれまで当たり前のように食べていたものがマスコミに特集され、日常的に出入りしていた場所に、好事家的な一般の日本人が大勢やってくるようになったのだ。
もちろん、大好きな食べ物に新たなファンが増えるのは喜ばしい部分もある。ただ、どうしても心がザワつくのは、店内で目にする彼らの注文の仕方が「なっていない」ことだ。いや、食通ぶってマウンティングしたいわけでは決してないのだが、「その注文の仕方だと十分に堪能できないのに!」と、隣のテーブルを眺めて勝手にハラハラしてしまい、精神衛生上よくないのである。
そこで今回は、中国ルポライターの私が自分の経験をもとに、日本国内でガチ中華の美味しさをフルに味わう方法を紹介していこうと思う。