食事は美味しいのに生ビールがまずい店が多いワケ

まずはドリンクについて書きたい。以下に気をつけると、ガチ中華をより楽しむことができる。

1.初見の店では生ビールよりも瓶ビール
2.初見の店ではハイボールやサワー、カクテルは避ける
3.飲み物の追加は瓶ビールのみか、そこから中国酒にリレーするのが無難
4.赤ワイン以外の他文化圏の酒は避ける

本来、中国の伝統的な食文化は、中医(zhōng yī:東洋医学)的な観点から冷たい飲み物を好まない。もちろん、現代の中国人は冷たいコーラもビールも飲むのだが、本質的に「冷たいものはキライ」という思想で食文化が形作られていることは重要である。

ゆえに中国人の店では、私たち日本人の感覚から見ると「冷たい飲み物へのこだわり」が薄い傾向がある。たとえば、食事は美味しいのに生ビールがまずい店が意外と多いのだ。ビールジョッキやサーバーの洗浄があまいせいで、ジョッキの内側に細かい気泡がついていたり、炭酸が弱く酸っぱいビールが出てきたりする確率もけっこう高い。

同じ理由から、ハイボールやカシスオレンジが「地雷化」する可能性も一般の日本人の店舗より高い。1杯ごとに濃度が安定しなかったり、ひどい場合は食洗機から出したばかりの温かいジョッキにハイボールを注いでくることもある。

脂っこいがお酒は進む。いくらでも進む。
筆者撮影
脂っこいがお酒は進む。いくらでも進む。

ちなみにガチ中華店には、「おひや」を頼むと角ハイボールやビールのジョッキに入れて持ってくる店もけっこう多い。これも、店舗側が日本の飲食のテクストをしっかり理解していないことに加えて、そもそも冷たい飲み物に対するこだわりが薄いことが理由のひとつと考えていいだろう。

意外とガチ中華と相性がいい赤ワイン

もちろん、なかには最適な状態の生ビールを提供する店や、美味しいハイボールを出すガチ中華店もちゃんと存在する。私見では「エクストラコールド」を置いている店は、ビール会社の営業さんがちゃんとメンテナンスしているので、まともな生ビールを出す確率が高い。また、そうした店は「冷たい飲み物」に対する目配りがあるので、ハイボールも美味しいことが多い。

だが、「エクストラコールド」を置いていない店の場合、他の客のビールジョッキを慎重に観察しないと、冷たい飲み物をちゃんと出せる店かの見極めが難しい。初訪問の店舗で頼む最初の1杯は、瓶ビールを頼んでおくのが最も無難な方法である。

追加のアルコールも、あらゆる店で失敗しない方法は瓶ビールを頼み続けることだ。中国酒もいいが、一般的な日本人が行きがちなガチ中華店の多くは東北料理か四川料理なので、長江下流域の酒である紹興酒との相性はよくない。ガチ中華の注文を成功させるコツは、厨師(料理人)や店舗と「文化圏」が近いメニューを選択し続けることにある(後述)。中国酒の選択に悩んだときは店員に聞こう。

日本酒や芋焼酎の注文はおすすめしない。文化的な距離感の問題から、そもそも店舗側がこれらの酒に愛着を持っていないため、ろくな品揃えをしていないことも多いのだ。どうしてもこれらに近いものを飲みたければ、(特に東北料理の店なら)マッコリやジンロなどの韓国酒を選ぶといい。

御徒町にある、北京の下町酒場の料理を赤ワインでいただけるガチ中華店。大変によろしい。
筆者撮影
御徒町にある、北京の下町酒場の料理を赤ワインでいただけるガチ中華店。大変によろしい。

ただし、「文化圏」がまったく違うのにオススメできるわずかな例外もある。それは、ちゃんとした赤ワインだ。アルコールの品揃えがまともな店舗に限った話だが、一部の赤ワインはガチ中華と非常に相性がいいので試してみてほしい。