「食事療法」悪影響も

怪しい代替医療の多くが、米国の規制が及ばないところで治療されていることは注意すべきことです。

わが国でもゲルソン療法を取り入れた治療法がおこなわれています。

精神科医の星野仁彦氏は1990年3月、S字結腸のがんになって手術をしました。ところが肝臓に転移してしまいます。

病院で寝ている患者
写真=iStock.com/gorodenkoff
体力を消耗している時に実行すべきではなかった(※写真はイメージです)

星野氏は、転移した肝臓のがんに直接注入して壊死させるエタノール局注療法で対処し、さらにゲルソン療法の7割程度をカバーする「星野式ゲルソン療法」を実践しました。

具体的には、大量の野菜・果物ジュースや生野菜を摂取し、無塩食、油脂類と動物性タンパク質の制限、イモ類、未精白の穀類(玄米)、豆類、新鮮な果実、堅果類(クルミ)、海藻などを積極的に摂り、逆にアルコール、たばこ、カフェイン、小麦、砂糖、食品添加物、精白された白米などは禁止、というものです。

左巻健男『陰謀論とニセ科学』(ワニブックス)
左巻健男『陰謀論とニセ科学』(ワニブックス)

星野氏は、星野式ゲルソン療法で治せたとしていますが、再発肝臓がんへのエタノール局注療法が功を奏したと考えられます。

ゲルソン療法については1990年代半ば、効果があるとした少数の医学論文がありました。しかしその執筆者らは、その解析についての批判を受け入れざるをえませんでした。つまり根拠を示すことができていなかったのです。

星野式ゲルソン療法は学会発表や医学論文にはありません。

ただでさえ、がん治療中はかなりの体力を消耗し、体重の減少もあるため、このような食事療法が闘病生活に耐えられるのか、疑問です。逆に大きな悪影響を及ぼす可能性も示唆されています。

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