だがあくまで夜営業を主な収益源と位置づけると構図は変わってくる。家賃や設備費、人件費、広告宣伝費、光熱費の基本料金など、昼営業をしなくてもかかる固定費は夜の収益で賄うと考えれば、昼営業の収支からこれらのコストを省いてみることができる。

つまり昼営業によって新たに発生する追加コスト、いわゆる「限界費用」は、人件費と食材費のみとなる。

夜営業のみの場合でも、早い時間から仕込みや開店準備をする人員が必要であり、そうした人員を有効に活用すれば追加の人件費を抑えられる。そもそも昼はメニュー数が限定的であり、ごはんやみそ汁のおかわりなど一部でセルフサービスを取り入れれば、店員数は少なくて済む。

そうなると、追加コストに占める割合は食材費が最も大きくなる。しかし昼の食材は、夜の食材と同じものをまとめて少し多めに仕入れれば、結果として仕入れ単価は下げられる。また夜に余った生魚を昼に煮付けで出したり、小鉢の付け合わせを使い回せば、ロスはさらに少なくなる。全体で見れば、夜営業のみの場合の食材費にさほど上乗せすることなく、昼の食材を調達できる仕組みになっている。

ランチは客単価は低くても、客の回転率はいい。薄利多売で、それなりに利益を確保できるケースも出てくるわけだ。

また、ランチには夜の来店を促す広告宣伝という意図もある。ランチで来た客に、夜しか使えないクーポンを配る店もある。ただ最近は、ランチによる夜の集客効果が期待できないケースも増えているという。安いランチのみ込み合って夜はガラガラという店も多く、居酒屋にとっては頭の痛い時代を迎えている。やはり居酒屋ランチは、消費者からするとお得といえるだろう。

ただし、追加100円でコーヒーを飲んでしまうと「お得度」は一気に減少する。コーヒーは原価率が低い“ドリンク”の一種であるため、店側はここで大きく利益を出しているのだ。

※すべて雑誌掲載当時

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300円ランチの満足度
(構成=小澤啓司 撮影=市来朋久、宇佐見利明、坂本道浩 図版作成=ライヴ・アート)