米コロラド州で開かれたコロラド・ステート・フェアで、厳粛な空気感を醸し出す美しい絵画が最優秀賞を獲得した。ところが受賞後、AIによる自動生成のアートだったことを制作者が明かし、物議を醸している。
TL;DR — Someone entered an art competition with an AI-generated piece and won the first prize.
— Genel Jumalon ?? Collect-A-Con (@GenelJumalon) August 30, 2022
Yeah that's pretty fucking shitty. pic.twitter.com/vjn1IdJcsL
同フェア期間中に開催されたアートコンテストにおいて、アーティストたちが腕を振るった応募作のなかから、『Theatre D'opera Spatial』と題された絵画が1等をさらった。作中では、劇場の大舞台のような豪華で厳かな空間にドレス姿の婦人たちが集い、大きく設けられた円形の開口部から差し込む神々しい逆光の前に佇んでいる。
受賞決定後、作者でありゲームデザイナーを本職とするジェイソン・アレン氏は、ソーシャルメディアの投稿を通じ、画像作成AIのMidjourneyによるアートだったことを明かした。出品したほかのアーティストには激怒する人々がある一方、AI作品の美しさと制作への努力を認める声もあるなど、議論を呼んでいる。
コロラド・ステート・フェアは毎年夏に開催されているお祭りごとであり、今年は9月5日までの11日間にわたり開催された。パレードや移動遊園地、そして早食い大会などの各種エンターテイメントに加え、コンサートやアートコンテストなど教育色の強い催しが開かれている。
美しいAIアートに、称賛と非難の嵐
作品への反応はさまざまだ。コロラドスプリングスの地方紙『デンバー・ガゼット』は、「アウト・ゼア・コロラド」は、アートコミュニティの人々などから作品に対し、「熱烈な支持と激しい抗議」の両方が殺到していると報じている。
アレン氏が優勝の事実とAIによる作品であったことをソーシャルメディア上で明かすと、投稿に対して8万6000以上の「いいね」が寄せられた。「創作力に富んでいる」「クリエイティブだ」など称賛が寄せられている。
一方、反感をもつ人も少なくないようだ。あるユーザーは「われわれは目の前で芸術性の死を目撃している」とコメントした。「あなたはアートから楽しさと生命を奪い去っているだけだ」と非難するユーザーもいるなど、辛辣なコメントも少なくない。
尽きない論争…AIアートは芸術作品なのか?
米テックメディアの「ヴァージ」は、あまりにも高いクオリティを叩き出したアレン氏の作品を前に、「『アートとは何か』をめぐる論争」にまで発展していると報じている。
AIアートとはいえ、優れた作品を生成するためには試行錯誤を必要とする。これの過程を作者の努力と捉えるのであれば、AIは単なるツールであり、その出力結果は作者自身の手による芸術作品だとみなすこともできそうだ。
AIを使用すること自体は、コンテストの規定に抵触しない。しかし、コンテストの応募者のなかには、特殊な制作の経緯を隠して出品した点で「不誠実だ」と憤る人々もいるようだ。AI作品だと仮に審査員が知っていたならば、受賞はあり得なかっただろうとする指摘もある。
一方、極めて自然に仕上がった作品の精度の高さと純粋な美しさにおいて、作品自体の価値を認める人々も多い。作品は「デジタルアート/デジタル加工写真」部門に出品されていたため、制作手法は極めてフェアだとの見方もあるようだ。