イライラを解消するために

「日々のイライラをなんとかしなくては」と思った早瀬さんは、「介護者の集い」という地域包括支援センター主催の会合に参加し、他の介護者の経験談を聞くことや、自分の悩みを話すことで多少楽になった。

「母に唯一お願いしている洗濯物干しですが、干し方が日に日に変になってきたので、いちいち私が手直ししなくてはならなくて面倒でした。会合で相談したところ、家事や仕事を取り上げることで認知症が悪化した失敗談をうかがうことができ、できることはやってもらった方が良いことがわかりました」

また、認知症についてネットで調べたり、認知症講座に参加して理解を深めたりしたことで、肩の力を抜くことができたという。

「認知症にはアルツハイマー、血管性認知症、レビー小体型認知症などの種類があること、その中で母は『その他』の分類であることや、比較的症状が軽いということを知りました。また、母はまだ、排泄や食事が自分ででき、ずっとマシな状態であることが分かったため、随分気持ちが楽になりました」

ピースがばらばらになっている人の頭部のイメージイラスト
写真=iStock.com/Iryna Spodarenko
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認知症講座では、家族の気持ちの「4つの心理的ステップ」について学んだ。「4つの心理的ステップ」とは、川崎幸クリニックの杉山孝博院長が考案したものだ。

第1ステップは「とまどい」「否定」。第2ステップは「混乱」「怒り」「拒絶」。第3ステップは「割り切り」または「あきらめ」。第4ステップは「受容」。介護する側は、4段階のステップを経て、認知症家族と向き合っていく。

「まだ症状が軽いとはいえ、トンチンカンな行動をされるとイライラするし、余計なことをされて手間が増えることも少なくありません。軽い重い関係なく、家族が認知症になれば誰でも戸惑うし、イライラするし、悩むという段階を経ることを知って、納得できました」

さらに早瀬さんはSNSを通じて、愚痴をこぼしたり同じ境遇の人とつながることで、「自分だけじゃない」と励まされた。