習近平体制に直結するタブーのほうが効果的

【内容の方向性①】

文化大革命や天安門事件といった、中国が長年抱えていて批判され慣れているタブーよりも、現代の習近平体制に直結するタブーのほうが問題視されやすいと考えられる。すなわち「天安門事件」よりも「新疆集中营」(新疆再教育キャンプ)、「打倒共産党」よりも「光复香港时代革命」(香港デモのスローガン)のほうが、検閲側が本気で嫌がるはずだ。

【内容の方向性②】

タブーワードではあっても、人が亡くなった往年の事件や、迫害された死亡者の名前(劉暁波など)といった単語は、道義的な問題としてあまり使わないほうがいいだろう。

ちなみに、中国を指すとある差別表現は、近年になり反体制派の中国ネット民が好んで使うようになっているため、実は「天安門事件」よりも当局から睨まれる言葉になっている可能性がある(参考)。だが、日本人が用いるのはやはり道義的に好ましくない。

【画像】

中国では画像もフィルタリングの対象になる(識別しやすいマークや画像内の文字、特定の人物の顔などは特にそうだ)。また、中国系サービスのクラウド上に保存されたデータは常に検閲の対象になり得る。なので、たとえば政治的なタブーワードがコマの内外に書き込まれた同人誌の違法コピーPDFのデータを保存した場合、データの所有者は面倒な目に遭う可能性がある。

そこで、4ページ目で紹介したCDSのサイト内に掲載されている「集金pay」「邪大大」「习正日」……などの怪しい言葉を、「耳なし芳一」の怪談さながらにびっしり書きこんだページを同人誌のなかに入れておくと、違法ダウンロードした相手の身にはなにか困ったことが起きるかも知れない。

「仕返し」にはいいが真面目な人がかわいそう

もっとも、中国において政治的に問題のあるデータを保有していたり、そうしたサイトにアクセスしたりしても、特別に危ない人(人権活動家や法輪功のシンパなど)や当局が捜査中の案件に触れた人などでない限り、そのことだけを理由に投獄されることはまずない。もちろん死刑にもならない。

ただし、パソコンのデータが破壊されてしまったり、運が悪ければ公安に呼び出されたり叱責されたり、档案(当局が保有する全国民の身上調査書、本人は閲覧できない)になにかを書かれたりと、多少の困った目には遭う。手法の是非をひとまず措くなら、著作権侵害に対する牽制や反撃としては、適度な強度の「仕返し」ではある。

とはいえ、中国の非人道的な言論統制システムを逆手に取って嫌がらせをおこなうという行為自体、あまり褒められたことではない。

なにより、ウェブサイトや同人誌が敏感な政治ワードだらけになった場合、いちばん気の毒なのは、対価を支払って正規の方法でそのコンテンツに触れているまともな中国人だ。この記事では「天安門事件」の連呼よりはマシな手法を紹介こそしたものの、最善の解決策はまだ見つかっていないと考えるべきだろう。

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