「天安門事件」よりも効果的な呪文を考える
さて、同人誌などに対する著作権侵害を防ぐために「天安門事件」を持ち出す行為について、効果は決してゼロとまでは言わない。
ただ、道義的に問題があるうえ、中国語としても歴史用語としても若干ピンときにくい単語なので、肝心のBAN効果が限定的である可能性がある。加えて「天安門事件」だけを連呼していると、当の中国人の著作権侵害犯からもバカにされかねず、悔しいという心情的な問題もある。
つまり、「魔法の呪文」としてはあまり出来がよくないのである。
そこで以下、もっと中国側の言論検閲システム(大雑把にこう呼んでおく)からフィルタリングされやすく、「天安門事件」よりも効き目が強い“魔法の呪文”の使い方について、中国ライターとしての立場から考察してみることにしよう。下記に挙げる点を踏まえて、タブーワードをサイト上に記載したり同人誌やイラストの内部に入れたりすると、より高い効果を見込めるはずだ。
日本の漢字より、簡体字や半角英数字のほうがいい
【表記】
日本の漢字ではなく中国語の簡体字や半角英数字のほうが、問題のある表現をフィルタリングする中国側のクローラーに見つけてもらいやすくなる。たとえば習近平の娘の名前である「習明沢」という単語の場合、日本の漢字よりも「习明泽」や「XiMingze」と書くほうが確実だ。
日本の漢字から簡体字への変換は、ネット上を探せばいくつもサイトがあるが、面倒な場合は「Chinazi」(中華ナチス)、「Heil Xitler」(ハイル・習トラー)などの半角英数字の単語でもいいだろう。すでにネットに流出している、習近平や習明沢の身分証番号や電話番号の文字列をさりげなく入れてしまう方法もある。
【数】
ひとつの単語を連呼するよりも、政治的に敏感な単語を複数詰め込むほうが、中国側の言論検閲システム(人力にせよ自動システムにせよ)からの警戒度は上がると思われる。
そうした単語を大量に取得したい場合は、中国のネット上のタブーワードを大量に収集・公開している『China Digital Space』(CDS、中国数字空間)内のカテゴリー「敏感詞庫」から拾ってくるのがおすすめだ。